デジタル依存の弊害は「仕事をした気になる」こと

デジタルとアナログを交ぜて使う

デジタルとアナログを交ぜて使う

アナログにこだわるべきなのは、情報収集時だけではない。情報の収集、分析・加工、発信という各段階に「デジタル」と「アナログ」両方の方法がある(表参照)。斬新なアイデアを出したり、人を説得したりするためには、3段階すべてをアナログで進めるのが理想的だが、限られた時間の中では難しいのが現実だ。

そこでお勧めは、3段階の最低1カ所にアナログを交ぜること。なかでも一番効果的なのは、収集の段階でアナログを使うことだ。独自情報であれば、加工が多少下手でも、内容だけで勝負できる。

プロフェッショナルと呼ばれる人は、アナログの手法を駆使し、人と違った視点で物事を見ている場合が多い。さらに、デジタルに依存することの弊害は、大した仕事をしていなくても「仕事をした気分になってしまう」ことだ。誰もが知る情報を切り貼りし、最新ツールで体裁を整えても、内容に付加価値がなければ人の琴線には触れない。私自身は、最後のギリギリの段階まで情報はアナログのまま扱う。特に少人数の経営者を相手にプレゼンする場合は、パワーポイントなどのデジタルツールを使わず、アナログで行ったほうが効果的だ。広く考えを知らしめる目的のプレゼン等、デジタルツールを使ったほうが効率的な場合も、デジタルで処理するのは最終段階だけだ。

情報収集というと、よく「ビジネスマンが読むべきものは何か」と聞かれるが、一律の答えはない。特定の目的で情報を集める場合は別だが、自分の感性に合うものを読めばいい。5分しかない日は5分を使った読み方、週末など時間があれば1時間を使った読み方をする。読むべきものや読み方を固定せず、感性の赴くままに目に留まったものを読めばよい。

デジタルとアナログの使い分けも、杓子定規に考えるのではなく、自分が何をしたいかという目的を持っていれば、自然とふさわしい手段を選択できるようになるものである。

(辻 和成=構成 尾関裕士=撮影)