日本企業は「宿題」をしてこない

イスラエルにどんな資産や技術があるのか、そして、その中に、自社が抱える課題の解決につながりそうなものがあるか、自社が将来強化したい分野に関連しそうなものがあるか調べておく。こうした「宿題」をやってから臨まないと、自社のニーズにマッチした、信頼できるスタートアップと「出会う」ことはできない。前もって情報を集め、あたりをつけて(仮説を持って)行くべきだろう。

先進的な電子政府システムで注目を集めるエストニアも、そうした物見遊山のような視察団が大挙して訪れたため、日本企業の訪問が敬遠され始めていると聞く。

イスラエル経済産業省でイスラエル投資推進局長を務めるジヴァ・イゲール氏も、「最近の、日本企業のイスラエルのスタートアップに対する高い関心は、イスラエルにとって、うれしいニュースだ。しかし、イスラエルでは毎年1000社以上のスタートアップが生まれており、手掛ける分野や得意とするテクノロジーも多岐にわたる。協業を成功させ、イノベーションを取り込むためには、日本側がもう少し自らのニーズを明確化し、何を求めているのかを表してくれるとよい」と話す。

良い出会いのためには、事前準備が必須

2016年ごろからイスラエルのスタートアップに関わっている、アビームコンサルティングの坂口直樹氏は「『よくわからないが、とりあえず行ってみる』というのは時間のムダ。我々は、イスラエルのスタートアップと組みたい日本企業とは、1カ月くらいをかけて、コラボレーションを通じてどんな提供価値を求め、どんな顧客セグメントを狙いたいのかを整理する。ある程度仮説を立てた上で現地に行けば、8~9割は良いコラボレーション相手の候補が見つかって次のステップに進める」と話す。

イスラエルのスタートアップと日本企業の連携支援事業を行っているミリオンステップスの取締役兼COO井口優太氏も、「我々は、単なる視察ツアーはやらない。必ず事前にコンサルティングを行い、『自社が今、何に力を入れているのか。どんなイスラエルのスタートアップに会いたいのか。何を求めているのか』などを具体的に説明できるようにしてもらう。イスラエルのスタートアップの時間を無駄にするようなことがあれば、我々のブランドにも傷がついてしまうので」と言う。