「弱み」を変換するアクション

じつは脳科学では、強みと弱みというのは「隣り合わせ」だといわれています。完璧主義なKさんの性格が物事や仕事に対するモチベーションを上げるのに役立っていたように、状況や環境によって、その人が弱点だと認識しているものは、いとも簡単に「強み」へと変貌を遂げるものでもあります

たとえば、営業トークが苦手で思い悩んでいたBさん。クライアントの前で自社のプロダクトの説明をする際に話を盛り上げることができず、いつも苦労していました。

Bさんは実直で、人あたりがソフトな性格です。友人の輪の中に入るといつのまにか人の聞き役に回るタイプ。彼は「そういう消極的な性格を治したいのです」と私のところにメンタル・コーチングを受けに来られました。そんなBさんに私はひとこと、「治さなくて、いいですよ」とお伝えしました。その代わり、徹底的に「聞き役」に回ってください、と。

「プロダクトの説明を上手にしようと躍起になるよりも、相手が困っていること、問題に思っていることを質問して、とにかく徹底的に聞くことに集中しましょう。そのとき、こんなバカな質問をしてもいいのだろうか? と思う必要はまったくありません」

「弱み」は本当は「大きな強み」なのかもしれない

根がマジメなBさんですから、それからというものの、営業トークのかわりに、クライアントに質問をして、徹底的に聞き役に回るようにしました。それがBさんにとっても心地よかったのです。

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すると不思議なことに、クライアントの引き合いもどんどんよくなっていきました。人は話を聞くより、しゃべりたい生き物です。Bさんの「聞く力」によって、クライアントは気持ちよく話すことができ、満足度が上がったというわけ。多くの人がわれ先にとしゃべりたい世の中にあって、「おだやかに人の話を聞けるBさんの力」というのは貴重なものだったのです。

Bさんのケースは、弱点だと思っていた部分がじつは大きな強みだったという端的な例でしょう。

いかがでしょう。いま、あなたは大きな不安の中にいるかもしれません。ネガティブな感情に心が支配されているかもしれません。しかし、「それ」はじつは、あなたの豊かな感受性や、人の心を敏感に読み取れる「強み」と表裏一体の関係にあります。不安は悪いものでもなくすべきものでもなく、「強み」という武器に変えて使うもの、なのです。

今日からそんな意識で自分の心と向き合っていただければ、と願っています。

※本稿は、中島輝『1分自己肯定感』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

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