日本音楽著作権協会(JASRAC)の使用料徴収をめぐり、音楽教室とJASRACが争っている。一審ではJASRACの全面勝訴となったが、米国弁護士の城所岩生氏は「過去の判例をなぞった判決だった。音楽文化の発展のためには、法律の不備を補完する柔軟な対応が求められる」と指摘する——。
記者会見する日本音楽著作権協会(JASRAC)の浅石道夫理事長(左)と大橋健三常務理事=2018年3月8日、東京都港区
写真=時事通信フォト
記者会見する日本音楽著作権協会(JASRAC)の浅石道夫理事長(左)と大橋健三常務理事=2018年3月8日、東京都港区

日本版「フェアユース」を早く取り入れるべきだ

日本音楽著作権協会(JASRAC)の音楽教室からの使用料徴収方針に対して、音楽教室事業者がJASRACに徴収権はないとして起こした訴訟で、東京地裁(以下、「地裁」)は2月28日、音楽教室事業者の請求を棄却した。

地裁は、古くは1988年の最高裁判決にはじまる古い判例が、今の時代の社会通念に合っているかどうかについては一顧だにせず、過去の判例をそのまま適用した(判決文はこちら)。JASRACの全面勝訴となった判決を不服とした音楽教室事業者は3月5日、知財高裁へ控訴した。

私はこれまで、著作物を扱う上で日本版フェアユース(公正利用)の必要性を説いてきた。フェアユースは公正な利用であれば著作権者の許諾なしに著作物の利用を認める規定のこと。著作権法は著作物の保護と利用のバランスを図ることを目的としている。著作物の利用には著作権者の許可を要求して保護する一方、許可がなくても利用できる権利制限規定を設けて利用者に配慮している。

わが国の著作権法はこの権利制限規定において私的使用、引用など一つひとつ具体的な事例を挙げている。対して、アメリカではどの事例にも使える権利制限の一般規定としてフェアユース規定を採用している。

個別権利制限規定方式では、新たに権利制限の必要性が発生する都度、法改正が必要になるが、法改正には時間がかかる。著作権法はソフトウエアなど技術革新の激しい分野も律する法律だけに、立法の遅れを補完するフェアユースのような権利制限の一般規定の果たす役割は大きいので、私は日本版フェアユースの必要性を訴え続けてきた。