2020年4月1日から、子どもへの体罰が法律で禁止になる。だが、ある調査では約7割の親が「子どもを叩いたことがある」と回答しているのが現状だ。今回の禁止にはどんな意味があるのか。長年にわたり、虐待防止の活動を行ってきた高祖常子氏が解説する――。
虐待防止法/一礼する根本厚労相
写真=時事通信フォト
参議院本会議で改正児童虐待防止関連法が可決、成立し、一礼する根本匠厚生労働相(右手前)=2019年6月19日、国会内

2018年の虐待対応件数は「約16万件」

児童相談所での虐待対応件数は、年々増加している。2018年速報値では、15万9850件となった(厚生労働省「平成30年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値)」)。これは児童相談所が対応した件数だ。虐待をなくしたいという風潮から通告件数が増えているとも言われているが、児童相談所や警察の話を聞くと、減っていることはないという。

厚生労働省の発表によると、虐待で命を落とす子どもの数は毎年約70~80人だ。しかもこの数字は、虐待死として把握された数である。事故死として扱われている子どももいるであろうし、虐待によってケガをしていたり、食事を抜かれたりしていても、命を落としていない子はカウントされていない。

2018年3月に、東京都目黒区で船戸結愛ゆあちゃん(当時5歳)の虐待死事件があった。みなさんの記憶にもまだ新しいと思う。5歳児が書いたと思えないような反省文がメディアで取り上げられ、ニュースが連日のように全国を駆け巡った。政府も動き、2018年7月には「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」が示された。