チョコ×サプライズで効果倍増

ビジネスで取引先と親しくなるための第一歩は「手土産」を持参することだ。お勧めはチョコレート。高級品でなくても産直物や歴史あるチョコを選べば会話のきっかけになるし、素材が厳選されたものなら相手の幸福度や健康に貢献するからだ。

働いている30~40代を対象に、菓子と自律神経機能との影響を調べた研究がある。すると、キャンディやビスケットよりも、チョコを食べたときのほうが副交感神経の活動が高まり、脳がリラックスすることがわかった。

「相手の脳を心地よくさせることが大切。心地よいと記憶に残りやすいですから」と米山氏が補足する。

原料であるカカオには、カカオポリフェノールが豊富に含まれ、幸せホルモンといわれる神経伝達物質の「セロトニン」を増加させるのだ。砂糖からくる甘さがなくても、人の幸福度に貢献する点が素晴らしい。

管理栄養士の望月理恵子氏も「チョコには、気分を変える効果がある」と説明する。

「カカオポリフェノールにはカフェインのような興奮作用が少なく、不安を減らし、気持ちを落ち着かせるという報告が複数あります。毛細血管を広げて全身の血流を促したり、善玉コレステロールを増やして悪玉コレステロールを減らす、高めの血圧を下げるなどの生活習慣病予防の効果もあるんです」

カカオ70%以上のチョコを1日25グラム(1枚5グラムを5枚)、1カ月摂取すると酸化ストレスが低下し、記憶や学習などの認知機能と関連するBDNF(神経栄養因子)に良い影響があるという報告も。

シンプルな原材料で作られるビターなチョコとともに「こんな効果があるんです」と一言添えて手渡してみてはいかがだろう。ちなみに渡す際には“サプライズ”がベスト。相手の脳が「予想外の報酬」と感じて、喜びが大きくなる。

ちなみに私の場合は、初めて先方(主に編集部)に伺う際は食べものの代わりに「企画案」を数多く持参する。そして2回目に会える機会があれば、会話が広がりそうな、チョコレートをはじめとした好きな菓子を持参する(プレジデント編集部のみなさん、そうでしたよね?)。

要は恋愛でもビジネスでも、相手との距離を縮めたい場面で「手ぶらで行くな」ということだ。

さて、もしあなたが贈り物をもらう立場になったら? ぜひ笑顔を返してあげてほしい。贈り主はあなたの笑顔を“脳の報酬”として受け取るからだ。

双方が「嬉しい」「渡してよかった」という気持ちになれたとき、お互いの脳にしっかりと記憶され、親密度がぐっとアップするに違いない。

(写真=Getty Images 図版作成=大橋昭一)
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