気持ちを込めた言葉を添えるとより効果的

「社会脳では報酬を得ると、黒質(図)から神経伝達物質であるドーパミンが分泌されます。これが線条体という部分に届くと、人に充足感をもたらすんです。贈り物を渡す際に、気持ちを込めた言葉を添えるとより効果的でしょう」(同)

チョコレートの効果

贈られた側は、脳が報酬を得て「嬉しい」「幸せ」と感じる。すると、贈り物をくれた人のことや、そのシーンがより記憶に残りやすいというから驚きだ。東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授が「感情と記憶の関係」を説明してくれた。

「ものすごく嫌な経験も記憶に残りますが、日常生活の範囲ではポジティブな感情と記憶のほうが結びつきやすい。感情を司る扁桃体と、記憶を司る海馬が近い位置にあって、お互いに影響を与えるんです。ですから贈られたほうが嬉しいと感じると、記憶に残る。記憶として残るとfamiliarity(親密度)が上がります」

ちなみに恋愛感情は「親密度が高いほど起きやすい」という報告があるため、何かの機会を口実に好きな人においしいものを贈る行為は花マル。女性から男性だけでなく、ホワイトデーのように男性から女性へのプレゼントもいい。多くの研究から女性の脳は「共感性」が高い傾向があるとされているため、男性から女性に贈り物をすることは「“あなたを想っている”と脳の共感に訴える行動で、想いが受け入れられやすい」(瀧教授)とのこと。

そして冒頭に記したように、特別なイベントでない日常でも、さらには恋愛だけではなくビジネスの場面でも、「食べもののプレゼント」は親密度アップに役立つ。

神経内科専門の医師で作家の米山公啓氏から興味深い話を聞いた。最近のMR(製薬メーカーの営業マン)がつまらないと言うのだ。

「かつてのMRとは一緒にゴルフをしたり食事に行ったり、楽しい時間を共有することが多かった。私が書いた本も読み、その感想を話してくれたり、こちらの趣味を研究して新情報を教えてくれることもありました。ところが今は業界団体の規制もありますが、好奇心旺盛な人が少なくなって薬の話しかしないMRばかり。面白い話題がなく、相手の話を聞く気も起きません」

お互いに相手への興味がわかず、距離が縮まらない状況では、とても信頼関係は築けないだろう。信頼性が低い相手からの話は聞きたくもなく、結果的にビジネスチャンスが広がらないという悪循環に陥る。