紛糾中の臨時国会。注目のポイントは、国家公務員給与の下げ幅だ。人事院は2010年8月に1.5%の引き下げを勧告した。菅直人首相は2010年9月の民主党代表選で「人事院勧告(人勧)を超えた削減を目指す」と公約した。だが、連合に「内需を縮小させる」と抵抗され、1カ月で公約を引っ込めた。

国税庁調査では民間給与は前年比で平均5.5%も下がっている。党首討論でみんなの党の渡辺喜美代表はこう皮肉った。

「菅総理の有言実行とは、思いつきを口にしては、すぐに迷走、都合が悪くなったらなかったことにするというものです」

こうした迷走の結果、「時間的な制約がある」(仙谷由人官房長官)として、国家公務員の給与法改正案は、人勧と同じ平均1.5%減となる見込みだ。

2009年の衆院選、民主党の公約は「国家公務員の総人件費2割削減」と「天下り根絶」だった。9月の所信表明で菅首相はこう明言している。

「公務員制度改革と国家公務員の総人件費の2割削減と併せ、一体的に取り組んでいきます」

意気込みだけでは困る。公務員給与をめぐる「改革」は迷走の度合いを深めている。

わずか3カ月で公務員制度改革相を辞任した玄葉光一郎衆院議員は、辞表提出後の会見で改正案の骨子をこう明かした。

「がんばった公務員は給料を上げる。がんばらない人は下がる。能力実績主義を徹底していく」

公務員は2008年まで毎年、二重の昇給を受けてきた。「定期昇給」と人事院勧告による「ベースアップ」である。ベースアップの幅は人事院が調査して政府に勧告する。これが「人事院勧告」である。2010年は2年連続のマイナス、つまりベースダウンとなった。基本給が30万円の公務員なら、定期昇給で平均6000円ほど上がり、人勧が1.5%の引き下げなら、マイナス4500円で、差し引き1500円の昇給となる。

国家公務員のモデル給与
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国家公務員のモデル給与

定期昇給の要件は、「年に40日以上の無断欠勤がないこと」とたいへんに甘く、事実上、すべての公務員が一律に昇給してきた。改正案では、この定昇部分について、能力実績主義を取り入れるというのである。

また、局長や部長の経験者で次のポストがない50代のために「専門スタッフ職」というポストをつくる考えも明かされた。

能力主義と「専門スタッフ職」の新設は、実は、民主党政権のオリジナルではなく、自民党時代の公務員制度改革を踏襲している。自民党政権下の08年、渡辺行革相(当時)による国家公務員制度改革基本法の成立時と考え方は大差ない。

しかし、給与慣行に手が入る段階になって、公務員を利する修正が次々に加えられている。

「能力主義の導入により、給料が増える人のほうが減る人よりも多いというお手盛り設計になっている」

みんなの党の浅尾慶一郎衆院議員は4月の国会でこう指摘した。仙谷公務員制度改革担当相(当時)は、「詳しいことはあずかり知らない」と逃げた。

専門スタッフ職の導入についても、当初の自民党案の目的は、50代の高すぎる給与を2割程度下げて総額人件費を抑えることだった。ところが、民主党案で実施した場合、総務省の試算では総額人件費は今より2割増になるという結果が出ている。

※すべて雑誌掲載当時