きっかけは、1本の電話だった

【Case1】「3月離婚」を目指し、計算ずくで動いた妻の復讐劇

「この人とはもうやっていかれない。別れよう。そう決意したのは、もう4年前になります」とすがすがしい笑顔で話すのはH美さん(39歳)。H美さんは大学卒業後、就職した会社で同じ部署の先輩だった2歳年上の夫と結婚。翌年には男児を出産したこともあり、会社を辞めて専業主婦の道を選択。夫を支え、初めての子育てに専念する結婚生活は、はた目には順風満帆に見えた。

そんなH美さんに4年前のある日、1本の電話がかかってきた。電話の主はH美さんと同期入社して、今は夫の隣の部署で働くS子だった。「久々に電話をかけてきたS子は、私の夫が部下の女性と浮気をしているから気をつけたほうがいい、と教えてくれたのです」。

家事と子育てで毎日疲れていたH美さんは、電話を受けるまで、夫が浮気をしているなどとは夢にも思っていなかった。ところがそれ以来、夫の様子に気をつけていると、たしかに浮気の兆候があちこちにあったのだ。セックスレス、夫婦の記念日を忘れる、ファッションが派手になった、休日の外出が増えた……どれもよくある浮気のサインだとは知っていたが、自分の夫にすべてあてはまると気づいた時は、さすがに愕然がくぜんとしたという。

置き忘れた手帳には「ハートマーク」が並んでいた

決定的だったのは、家に置き忘れられた夫のスケジュール帳を見た時のこと。今まで残業で帰宅が深夜になると言っていた日には、すべてハートマークが記されていた。「女子高生でもないのにハートマークって……。浮気していることを隠そうともせず、すっかり浮き足だっている夫に腹が立って仕方がありませんでした」

H美さんの変化は翌日からはじまった。小学4年生になった息子を進学塾に通わせ、休日も塾が休みの日は家庭教師をつけるなど「教育ママ」に急変。とにかくわが子を都内でも有名な一流中学に入れるために、母親としてすべての力を注ぎこむようになった。「広い子ども部屋で勉強に集中させたい」とマイホームも購入した。事情を知っている人は、「夫に失望した分、息子に夢を託すようになった」とH美さんの心中を想像したかもしれない。ところが、もっと現実的な計画があった。