「テレビの時代は終わった。ギャラは格段に低く抑えられ、出番も激減した」

こう語るのは、ある経済評論家だ。コメント取材で、何度もワイドショーやニュース番組にVTR出演していたが、最近は声がかからなくなったという。ある民放ディレクターはこう嘆く。

「制作費が切り詰められ、外部のコメンテーターは極力使うなと、上司から言われている。謝礼もかつてのように払えなくなっています」

「腐っても鯛」それでもキー局は高給
「腐っても鯛」それでもキー局は高給

評論家やジャーナリストといったコメンテーターをテレビ局では「文化人枠」と呼び、取材謝礼は3万~5万円をスタートに、徐々に料金が上がっていくシステムとなっている。それがここ数年で、謝礼額が1万~2万円にまで下がっているというのだ。

経費だけではない。2010年9月30日正午、日本テレビ労組が36時間ストライキを決行。実に、2010年3度目のストだという。

日本テレビは、新たな賃金制度を会社側が組合に提示。昇給ペースの抑制や残業単価の切り下げなど、実質的な賃下げとなる内容が盛り込まれた。これに対し労組は受け入れを拒否、5月には2時間の時限ストを、9月初めにも24時間ストを決行し、合意に至らなかった。

横浜球団売却騒動で揺れた東京放送ホールディングス(TBS)は、民放他社に先駆け、04年に分社化し、09年に持ち株会社に移行。テレビ番組の制作現場は、すべて子会社に移っており、社員の給与所得水準は他の民放各社に比べると低く、士気は下がったままだという。

「視聴率が悪いと長時間の会議で責められ、給与も上がらない。会社の展望も見えないが、今は(会社が)あるだけありがたいって思うようにしている。もし、潰れでもしたら、目も当てられない」

もはや、給与や生涯賃金云々より、会社の存続が気になっているというのだ。栄華を誇ったテレビ業界も随分変わったといえるだろう。

とはいえ、テレビ・メディア業界の待遇が他業種を圧倒しているのは変わらない。別表をご覧いただきたい。在京キー局は揃って、平均年収1000万円台をキープしているのだ。むしろ、かねてから指摘されている制作会社などピラミッド構造の待遇改善が急務。制作費のしわ寄せは、下請け、孫請けの業者に降りかかり、それが業界全体を萎めさせている原因だからだ。

また、テレビと一緒に成長してきた広告代理店の落ち込みにも驚かされる。業界2位の博報堂DYホールディングスは、生涯賃金こそ3億円台になっているものの、平均年収は1000万円を割り込んでいる。インターネット広告が徐々に拡大し、広告業界もその対応に追われている。今後、テレビ、新聞にも本格的な“冬の時代”が到来するかもしれない。

※すべて雑誌掲載当時