追随を許さない安倍首相の「下品力」

【佐藤】そのへんにも、どんな会話も受けて立つ、安倍流の「下品力」が発揮されています。これは悪口を言っているのではありません。安倍さんがトランプの懐に飛び込むことができたのもこの「下品力」が存分に発揮されたからです。これはドイツのメルケル首相やイギリスのメイ前首相などの追随を許しません(笑)。

手嶋龍一・佐藤優『日韓激突 「トランプ・ドミノ」が誘発する世界危機』(中公新書ラクレ)

【手嶋】かつての中国の指導者が、大国の賓客を迎えてこんな発言をしたことなどあるでしょうか。

【佐藤】ここまでイデオロギーを弱体化させて、果たして、混迷を深める時代の超大国を率いていけるのか。他人事ひとごとながら心配になってしまいます。大国のリーダーがプラグマティズムをあらわにして行動する。恐ろしいことだと申し上げておきます。資本主義社会では、イデオロギーが弱まると、力が貨幣に吸収されてしまう。金を持つ人間が子飼いをつくって、利権を配分しつつ、血液のように循環させる仕組みをつくる。そうしないと、権力が維持できないからです。

【手嶋】いまの中国でも、そういうシステムに乗って、途方もない蓄財を果たした人間がたくさん出ています。中国共産党の権威を存分に使って金を儲けていた。習近平政権が誕生すると、「反腐敗運動」が起きて、そうした弊を一掃とまではいきませんが、駆逐しようとした。このため、現在の中国では、党の権威を笠に着た金儲けは難しくなってしまいました。

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