アメリカに生まれていたら、共和党に入った

【手嶋】超大国アメリカとの覇権争いに名乗りを上げた現代中国が、実は「統合の原理」を欠いている——。非常に重要な指摘だと思います。佐藤さんの話を聞いて、2018年10月26日に釣魚台迎賓館で催された晩餐会席上での習近平発言を思い出しました。米中衝突のさなか、トランプの盟友である安倍首相を惹きつけようという狙いもあったのでしょう。習近平国家主席は、これまでに見せたことがないような満面の笑みで安倍首相を迎えたのです。それだけに、習近平はいつになくリラックスした表情をみせ、安倍首相にこう語りかけました。

「私は中国に生まれましたから、政治を志すにあたって、共青団(中国共産主義青年団)から中国共産党という組織を経て、今日に至りました。もしアメリカに生をうけていれば、共和党か、民主党に入って、一国の指導者を目指したことでしょう」

晩餐の席には、中国共産党の最高幹部がずらりと顔をそろえていたのですが、この習近平発言に、申し訳程度にお追従笑いは浮かべたものの、彼らの表情はこわばったといいます。

共産党は国家権力を握るための「道具」

【佐藤】それはそうでしょう。大長征をやり遂げた中国共産党の理念とはかけ離れた、非常に現実主義的な、プラグマティックな思考が顔をのぞかせています。

【手嶋】まさしく、その通りです。習近平発言の行間を読み解けば、自分は中国共産党の理念に共鳴して党の前衛組織に入ったわけではない、あくまでも、政治権力を掌握するために組織の人になったということになります。その証拠に、アメリカに生まれて、大統領になろうと思えば、二大政党のいずれかに属していたというのですから。

【佐藤】そう言ってしまえば、身もふたもないのですが、中国共産党は、国家権力を握るための道具に過ぎない——と。

【手嶋】中国共産党に特に思い入れなどない。他に選択肢がなかった。そこにあるのは、イデオロギーなどという高尚なものとはほど遠い指導者の思考のスタイルです。このエピソードには続きがあります。安倍首相が、この習近平発言を引き取って、「ならば、習近平国家主席がもし日本に生まれていれば、われらの自由民主党にお入りになったわけですね」と言って、列席した人々の爆笑を誘ったそうです。