1カ月に4回、タクシーに乗っても得

柳澤さん一家が保有しているのは、1500ccのミニバン。ガソリン代や駐車場代のほか、年単位では自動車税や車検費用がかかる。車の取得費を200万円、10年使用の前提では、車両代が年20万円となる。それらを合計すると、車にかかる費用は月額で約4万5000円、年間では53万6300円である。

車を手放すとどうなるだろうか。

夫婦が車を使うのは、週末の買い物と家族で外出するときで、月6回×3時間程度。これをカーシェアリングにすると、会費と利用料(保険料やガソリン代が含まれる)で、月額1万4800円程度と見込まれる。

父親はバスとタクシーを利用する。柳澤さんが住む地域では、65歳以上を対象にしたバスの定期券があり、月額6000円で路線バスは乗り放題、高速バスなども割引料金で利用できる。レジャーでの外出はバスを利用。病院へは乗り継ぎが面倒なため、タクシーを利用。1往復3000円×月4回で、バスの定期代と合わせて月額1万8000円となる。

夫婦がカーシェアリングを利用する代金と合計すると、月額3万2800円である。車を手放してタクシーなどを利用したほうが月額で約1万2000円、年間では14万円以上のトクになる計算だ。

タクシーを使うのは贅沢に感じがちだが、こうして試算してみると「マイカーのほうが贅沢」なのである。あと5回(各3時間)近くカーシェアリングを使う、または往復3000円のタクシー利用を4回利用しても、車の維持費と同程度。もしそれを上回る月があったとしても、「安心を買っている」と思えばいい。

このように、実際の利用シーンを洗い出し、具体的に試算すると、車を手放したほうが得になるケースは少なくない。「1カ月に4回タクシーに乗っても得」「8回乗っても大丈夫」などと話せば、父親も気持ちを切り替えやすい。

シルバーパスから運賃割引まで

気を付けたいのは、免許を返納することで外出の機会が減り、父親が閉じこもりがちになってしまうこと。健康も損なうし、認知機能が衰えることも懸念される。外出の回数は減らないよう工夫したい。

免許返納を促すため、自治体もさまざまな方策を打ち出している。例えば東京都では70歳以上の高齢者には都バスや都営地下鉄線などに無料で乗車できるシルバーパスを発行している(住民税非課税の人などは発行料1000円)。また、自治体によって特色はあるが、運転免許の自主返納を行い、「運転経歴証明書」を受け取ると、タクシーの運賃が割引になるなどの特典もある。