EEZ内での無許可操業には、拿捕や立ち入り検査が可能

石川県能登半島沖の日本のEEZ(排他的経済水域)内で10月7日午前、水産庁の漁業取締船「おおくに」(1300トン)と北朝鮮の漁船が衝突した。漁船は沈没したが、乗員約60人は取締船の救命いかだに助けられ、別の北朝鮮の漁船に乗り移った。取締船の乗組員にけがはなく、漁船乗員にもけが人はでなかった模様だ。

写真=時事通信フォト
2019年10月7日、石川県・能登半島沖で発見された北朝鮮漁船(水産庁提供)

排他的経済水域とは沿岸から約370キロ以内の範囲にある海域で、沿岸国には漁業などの天然資源を優先的に開発する権利が国際的に認められている。日本の排他的経済水域内での無許可操業は漁業主権法で禁止され、水産庁の取締船や海上保安庁の巡視船は、拿捕だほや立ち入り検査ができる。

北朝鮮漁船が衝突事故を起こしたのはまさにこの水域で、北朝鮮漁船は違法な操業、つまり密漁を行っていたとみられる。

近年の「スルメイカ」の不漁の一因か

それではなぜ、北朝鮮漁船は違法操業を行うのか。

衝突事故が起きた海域は寒流と暖流が交わり、魚類のエサとなるプランクトンが豊富な大和堆と呼ばれる好漁場だ。とくに6月から1月にかけては美味なスルメイカがよくとれる。

北朝鮮は大和堆の豊かな水産資源に目を付け、違法操業を続けている。水産庁のまとめによると、2016年に3681件だった警告件数が、2017年に1.4倍の5191件に急増し、さらに2018年には5315件と増加している。

北朝鮮の密漁漁船の増加に日本の漁業関係者からはこんな話を聞いた。

「日本の漁船と衝突する危険性もある」
「北朝鮮漁船が無造作に捨てた網がスクリューに絡まる事故も起きている」
「北朝鮮の乱獲は近年のスルメイカの不漁の一因だ」