体罰や虐待の抑止力になる

また、外で働くということは、当然、家庭としては収入が増えるということです。お金だけで家族が幸せになれるわけではありませんが、お金があることで避けられる面倒や悩みは少なくありません。そのため、保育園を利用することで、お母さんの金銭的な悩みとそこから生じるストレスが軽減されると考えられます。

山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(光文社新書)

こうした変化が、お母さんのストレス減少、幸福度アップとしてデータに表れているのではないでしょうか。

お母さんの精神面が安定すると、母子関係が良好になるので、子どもを叩いてしつけるといった好ましくない行動が避けられるようになります。子どもを叩いてはいけないと頭ではわかっていても、イライラしていると自分自身をうまくコントロールできなくなってしまうのは誰にでもあることです。

また、子どもが保育園に通うことで、保育士さんのような家族以外の人の目に触れるようになります。子どもの体を見たり、話をしたりすることで、保育士さんは子どもが叩かれていることを知りえます。子どもが叩かれていることがわかれば、保育士さんは親に適切な指導をしたり、児童相談所と連携したりすることもでき、体罰や虐待の抑止力になるということも考えられます。

保育園は「家族の幸せ」に貢献している

お母さんのしつけの質の向上がデータに表れているのは、こうした経緯によるのではないでしょうか。

お母さんのしつけの質が良くなれば、子どもの精神状態が安定しますし、問題を暴力によって解決しようということもなくなります。その結果、子どもの多動性・攻撃性が減って、行動面が改善されたのではないかというのが、私の考えです。

ここで説明した、子どもの行動面が改善される仕組みは、データ分析の結果と整合的ですが、まだまだ明らかになっていない部分も多く、さらなる研究が必要です。

この研究一つをもって、日本の保育制度の評価を下せるわけではありませんが、保育園は、「家族の幸せ」に貢献しているかもしれないというのは、希望のある結果ではないでしょうか。

【関連記事】
"1歳までは母親が育児すべき"が間違いな理由
「保育園児より幼稚園児の方が上」は本当か
モンスター親をふるい落とす名門校の質問
子供が見違える「短い声かけフレーズ10」
バカでキレる子を量産する「ネット依存」の怖さ