なぜ体罰は良くないと考えられているのでしょうか。それは、親が体罰を行うことで、自分の葛藤や問題を暴力によって解決してよいという誤ったメッセージを伝えることになってしまうためだと考えられています。ある日本の研究では、幼児期に親に体罰を受けた子どもは、ほかの子どもに乱暴しがちで、問題行動を起こしやすくなる傾向があることを明らかにしています。

実践するためには大変な根気がいるが……

「体罰は避けて、言葉できちんと説明すべきである」というしつけの原則は、ここで教えられなくても知っているよ、というお父さん、お母さんも多いことでしょう。しかし、これを実践するためには大変な根気がいるのもたしかです。

3歳ぐらいまでの子どもがわかるように言葉で説明すること自体大変ですし、親目線で見れば、何度説明しても子どもはちっとも行動を改めないように見えます。そもそも大人だって、一度言われたぐらいで行動を改められないのですから、子どもが特別悪いわけではないのですが、説明するほうのストレスが溜まるのもたしかです。時には感情を爆発させてしまうこともあるでしょう。もちろん私自身、そういう親の一人です。

あくまで個人的な経験に過ぎませんが、息子がかなり小さい間は、体罰とは忍耐をもって避けるべきものでしたが、幼稚園に通う頃になると、体罰は諦めざるを得ないものになりました。どんどん体が大きくなって、力もついてくると、子どもを力で押さえつけるなんて、早晩、私にはできなくなると悟ったのです。腕っぷしに自信がないという、なんだか後ろ向きな理由ですが、少しずつ言っていることが伝わっている実感がでてくると、子育てがぐっと楽しくなったのもたしかです。

また、思わぬ副作用として、息子を言葉で言い聞かせようとしているうちに、自己評価ながら、授業で学生に対する説明のしかたがうまくなったと思います。仕事をされているお父さん、お母さんも、子育てが仕事でのスキルアップにつながることもあるかもしれません。そう考えると、ほんの少しだけ気持ちが楽にならないでしょうか。