時代に合った「新しい音楽」を作り出さないといけない

琉響の発足は2001年。沖縄県立芸術大学(県芸)に音楽学部が開設されたことを受け、県出身の演奏家のために活動の場を提供しようと、県内初のプロオーケストラとして活動をスタートした。旗を振ったのは、県芸の当時の音楽学部長で、過去にはNHK交響楽団の首席トランペット奏者も務めた故・祖堅方正氏。大友氏は過去に共演した縁で、設立当初からミュージックアドバイザーとして参画した。毎年の公演で指揮を重ね、2016年からは音楽監督を務めている。

今回、琉響オリジナルの楽曲を制作することの意味について、大友氏は次のように語る。

「一般に、オーケストラ活動の大きな柱は、スタンダードな古典の名曲を演奏し続けていくことです。ハイドン、モーツァルト、ベートーベンから近代の名作まで……といった具合ですね。ただ、これは世界中どこの楽団でも、日常的に営まれていること。楽団としての独自性を打ち出していくためにも、クラシック音楽を後世に伝わるものとしていくためにも、もう一つの柱が必要です。すなわち、時代に即した新しい音楽をつくり出していくことです」

「客席総立ち」で踊りだしたアンコール

琉響は、その「もう一つの柱」を実践する場にふさわしいと、大友氏は考えている。人材育成機関としての公立の芸術大学があり、合唱や吹奏楽、コーラスなどを含めたアマチュア楽団の活動も盛んだ。ジャンルは異なるが、安室奈美恵をはじめとしたスターを生み出した「沖縄アクターズスクール」の存在など、音楽と県民の距離は、国内の他の地域と比較しても非常に近い。

実際、東京都出身の大友氏にとっては、忘れられない体験となった沖縄での出来事があるという。自衛隊の音楽隊による吹奏楽のコンサートを聴きに行ったときのことだ。

「メインのスタンダードな演目はもちろん素晴らしかったですが、アンコールで驚かされました。突然、隊員の数名が三線さんしんを取り出し、他のある隊員はマイクを手にして、沖縄の民謡を披露し始めたんです。すると、客席が一斉に総立ちになって踊り始めた。地域に、本当の意味で音楽が根付いているのだと実感しました」

大友氏は、琉響が介在することでその土壌をより豊かに育てていけると考えている。今回、制作に挑むCDでも、沖縄古来のメロディーと四季の風景に着想を得つつ、オリジナルの楽曲を仕立てる。

「今回のアルバムは気鋭の作曲家萩森英明さんによる、今までにない洗練された沖縄の音を感じていただけるはずです」