上田社長が「隠れ営業戦略会議」と呼ぶ社長塾は、毎年全国十数カ所で開催する。参加メンバーは加盟店の店舗運営指導員や店舗開発担当者など現場の第一線を担う20代から35歳ぐらいの若手社員。テーマを決めず、資料もつくらないことが会議のルール。上田社長は最初の30分、会社の現状や方針を話すが、あとは聞き役に徹する。会議は4時間ほど続き、2次会は居酒屋が恒例である。

私にとっては、2次会が本番です。酒も入って、本音で語り合います。これはかなり盛り上がります。

社長塾で出た話を上司たちに、「若い社員がこう言っているよ」と伝えることもあります。部下がどういう思いで日々の仕事をしているのか、どんなことに悩み、なぜ成果につながらないのか、それを上司がよく見ているかどうかを反省してもらうためです。

上司と部下のコミュニケーションがまずいと、自分のみならず、組織の多くの人にムダな時間、無意味な時間を使わせてしまいます。よく「ムリ、ムダ、ムラをなくせ」と言いますが、時間の使い方も同じです。問題解決までの時間を短縮させ、部下に時間を活用させることが上司の仕事です。

最初の頃の社長塾では、「365日、24時間、加盟店の店舗指導や支援に追われて寝る間もない。これでモチベーションが上がるわけがない」と言う社員が少なからずいました。

あるとき、私は社員の1人に1対1で意見したことがあります。「あなたは大変だ、大変だと言うけれども、時間の使い方がおかしいんじゃないか。10時間も仕事をやらなくてもいいよ。3時間でいい。その代わり、3時間でやるべき仕事を僕が3つ言うよ」と。 その社員が管轄する7店舗を実際に見てきました。すると、昼の12時半には1番売れている弁当が品切れしていました。そこで指示した1つめの仕事は、午後1時まで1番売れている商品の在庫を5個残すようにすることです。2つめは、お客さんに「いらっしゃいませ」も「ありがとうございました」も言わない店を1週間以内に言えるようにすること。3つめは、床のタイルが汚れ、蛍光灯が切れている店の清掃のやり方を変えることです。これを毎日3時間やりなさいと言いました。コンビニの商売では、これだけでも加盟店の業績が変わります。

そのうえで、3時間でできる仕事に10時間もかけている理由は何かを指摘しました。それは、オーナーや店長、アルバイトと勇気を持って真正面から向き合って話をしていないからです。