構想10年、着手5年。先の戦争に関する本格的な検証番組を手がけたのが、NHK大型企画開発センターの角英夫エグゼクティブ・プロデューサーをリーダーとする取材班だ。

(写真右)角英夫 エグゼクティブ・プロデューサー(1983年入局)。同検証番組の第1~4回を統括。『マネー資本主義』など番組制作は多数。(写真左)内藤誠吾 チーフ・プロデューサー(90年入局)。同番組の第1回「“外交敗戦”孤立への道」を担当した。
(写真右)角英夫 エグゼクティブ・プロデューサー(1983年入局)。同検証番組の第1~4回を統括。『マネー資本主義』など番組制作は多数。(写真左)内藤誠吾 チーフ・プロデューサー(90年入局)。同番組の第1回「“外交敗戦”孤立への道」を担当した。

番組は太平洋戦争の開戦から70年にあたる今年(2011年)1月から3月にかけて、全4回の「NHKスペシャル」として放送された。その前半2回分をもとに書きあげられたのが本書である(下巻は6月23日発売)。

「戦争検証もの」は、ドキュメンタリー番組の定番だ。NHKだけでもこれまでに相当数の番組を放送している。「僕自身も、この20年で20本以上も『戦争もの』をつくってきました」と角氏は語る。ある意味では語りつくされたテーマである。そこになぜ、情熱を傾けるのか。

「長く取材を続けるなかで、疑問に感じてきたことがいくつかあるんです。一つは、われわれ日本人が戦争をどう意識しているかという問題です。いま日本人の多くは、自分たちが生きる戦後と、戦争を引き起こした『戦前』という時代とは継続性がまったくないと感じています。戦争は『戦前』という特殊な時代の、ある種野蛮な人たちが引き起こした異常な事態であって、戦後民主主義に馴染んだ自分たちのうえには絶対に起こりえないと信じています。しかし、本当にそうなのかという疑問がありました」(角氏)

番組は外交・陸軍・メディア・リーダーシップという4つの切り口から、タイトルどおり「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」を簡明に説いていく。最近になって発掘されたという元軍人らによる証言テープが当時の空気を生々しく伝えている。恐ろしいのは、この時代の要人は誰ひとりとして破滅的な日米開戦を望んでいなかった、という事実だ。

「1925年に普通選挙法が成立した日本は、政党政治をいち早く実現していました。その時点では軍部に権力が集中していたわけでもありません。にもかかわらず、日本は幾重もの判断ミスを重ねた揚げ句、破滅へと進んでいきます。それはなぜなのか。理由を問うことで、現代にも通じる教訓が導き出せるのではないかと思いました」(同)

前半2回の放送後、NHKには「より多くの人に見てもらうため積極的に再放送すべきだ」という声が1000件ほど届いたという。世界の潮流の変化に乗り遅れ、党派の利害対立を解消することもできずに奈落の底へと落ちたかつての日本。繰り返すようなことがあってはならない。