元号は「漢字2字の熟語」ではない

元号を、漢字2字の熟語だと思われている方もいるかもしれないが、元号は基本的に既成の熟語ではない。ある一連のセンテンスの中から、核になる言葉を2字選び、合成するのが一般的である。

『元号と日本人』プレジデント書籍編集部(著)、 宮瀧交二(監修)

たとえば、「平成」は『書経』の「地平天成」と、『史記』の「内平外成」という2つの出典から、また、「昭和」は『書経』の「百姓昭明、協和万邦」から2字を選んだものだ。いずれも熟語ではないことがわかるだろう。

元号の出典は、中国の古典である四書五経(『大学』『中庸』『論語』『孟子』の四書と、『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』の五経)がほとんどである。四書五経は儒教に関する文献の中でも重要視されているものである。古来の勘申者は漢学の研究をしている者が多かったため、その出典は中国古典から選ばれていたわけである。

現在では、これまでの中国の四書五経を卒業して、純粋な日本古典から選んでもいいのではないか、という意見も出ている。聖徳太子の十七条憲法や、嵯峨天皇の漢詩、あるいは近世・近代の文人の漢詩などから選ばれることも、これからは可能性があると私は感じている。

宮瀧 交二(みやたき・こうじ)
大東文化大学文学部歴史文化学科 教授
1961年、東京都生まれ。立教大学大学院文学研究科博士後期課程から埼玉県立博物館主任学芸員を経て、現職。専門は、日本史・博物館学。博士(学術)。NHK「ブラタモリ(大宮編)」に出演。元号についての講演に多数登壇。
(写真=iStock.com)
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