会社員人生の最終盤をどのように過ごそうか──。多くの人が会社に残る選択肢をとる中、地方の優良企業で幹部になるという決断をする人が現れている。彼らはどのように選考を突破したのか。識者が解説する。

大企業「シニアにやってもらう仕事がない」

2018年9月、政府は企業に対して65歳までとしている雇用継続の義務付けを、70歳までに見直す方向で検討に入ると発表した。背景には、高齢者の増加にともなう年金・社会保障費増の抑制、そして深刻化する人手不足への対応がある。しかし、人手不足とはいえ、企業、特に大企業のシニア社員に仕事があるかというと話はそう簡単ではない。

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大企業では年々、役職定年制を導入する企業が増加。管理職でも多くが55歳前後で役員に昇進していなければ、役職定年を迎えて専門職などへの異動を余儀なくされる。

「多くの大企業で、シニア社員全員に仕事を割り当てることが難しくなっています。つまり、やってほしい仕事が明示できなくなっている。言葉を選ばずにいえば、シニアにやってもらう仕事がないということです」

こう語るのは、ライフワークスの梅本郁子代表。ライフワークスは、味の素や積水化学工業、東京急行電鉄といった大企業などを対象に、シニア社員向けのキャリア研修を行っている。年間約200社、受講者は1万2000人を超える。

「企業からの要請としては、シニア世代も組織に貢献できる人材であってほしいというのが一番です。しかし、『あなたの役割が変わります』と言われたときに、わかっているつもりでも頭が切り替えられない人はとても多い。改めて自分の人生と向き合って戸惑ってしまう。それが40代後半、50代前半の時期なのです」(梅本氏)

もちろん、基本的には、現在の会社でのキャリアアップを狙うという人が多い。ライフワークスでも、社内でのキャリア形成を見つめ直すことからコンサルティングを始める。しかしながら、出世コースに乗り、いずれは役員に、という単線型のキャリアを描けるのはごく一部。内容、待遇とも満足できる仕事を得られない人のほうが多いという。それでも大企業の傘の下、失敗せず、上に尽くして必死に働いていれば老後も安泰──そんな時代は過去のものになりつつあるのだ。