「研修生」というバッジをつけたスタッフたち

今年の4月以降、日本の職場の様子ががらりと変わり始めることになりそうだ。改正入国管理法の実施で、働く外国人が増え、職場に外国人がいるのが当たり前になってくる。そんな職場での働き方も大きく変わる。部下の外国人を使いこなすスキルが必須になるのも時間の問題だ。

2018年12月8日、改正出入国管理法が賛成多数で可決、成立した参院本会議(写真=時事通信フォト)

すでに前哨戦は始まっている。4月1日に導入される「特定技能1号」という就労資格では、「宿泊業」や「外食業」というこれまでは原則禁止されていた分野で、外国人が正規に働くことが可能になる。

大分県別府。湯煙が上がる温泉街は中国人などの外国人観光客が目立つ。老舗のホテルの玄関を入ると、着物姿の若い女性スタッフが客を出迎えている。ところが、胸に「研修生」と書かれたバッジを付けている。聞いてみると中国からやってきたスタッフたちだった。

旅館の客室係は圧倒的に人手不足で、全国の観光地の旅館は悲鳴を上げている。客室係の手が足らないため、部屋が空いていても予約を断っているところも少なくない。旅館やホテルで作る全旅連(全国旅館生活衛生同業組合連合会)では数年前から外国人労働者の解禁を政府に要望してきた。

抜け道として使われてきた「留学生」

もともと旅館の客室係やホテルのルームメイドなどの仕事は「単純労働」だとして外国人の受け入れが禁じられてきた。就業ビザが下りなかったわけだ。単純労働の職場に外国人を入れると日本人の仕事が奪われる、というのが理屈である。工場や農業など同様に人手不足で喘ぐ現場には、技能実習生という制度が導入され、日本の技術を学んで本国に持ち帰るという「建前」で働き手を受け入れてきた。だが、旅館や外食といった分野はその技能実習の対象からも外されていた。

そんな中、抜け道として使われてきたのが留学生。日本語学校に留学すれば、週に28時間までならアルバイトができる。夏休みなどは40時間まで認められる。都会の外食チェーンなどは、こうした「留学生」をせっせと採用して店員として使っているので、外食チェーンのお店に行くと日本人スタッフがひとりもいない店舗に出くわす。だが、地方の旅館やホテルの場合、専門学校や日本語学校などの留学先がなく、留学生自体がいない。

外国人労働者を解禁してほしいという声は、地方の方が強いわけだ。かつては外国人を受け入れるべきではないと強く主張していた保守派の自民党国会議員ですら、地元支援者の切実な訴えに耳を傾けざるを得なくなった。改正入国管理法が2018年秋の臨時国会での短時間の審議であっさり通過したのは、こうした事情があった。