満員電車や飛行機など、逃げ場のない・助けを得られないような閉鎖的な場所に恐怖を覚え、発作を起こす人が多い。これは「広場恐怖」と呼ばれる。パニック発作という自覚はなくとも、息苦しさや動悸を感じたことのある人は少なくないだろう。初発の場合、ほとんどの人は身体の疾患を疑って救急車を要請するが、発作自体は数分~数十分で落ち着く。病院に着くころには発作が収まり、診察では当然異常は見当たらない。そのためパニック障害の診断が下りるまでは、発作のたびに救急車を呼ぶ人や、原因を探るためにあらゆる検査を受ける人も見受けられるという。

服薬で症状はほぼコントロールできる

主な治療は抗うつ薬・抗不安薬の投与。服薬によって症状をほとんどコントロールできるという。

「薬が効き始めるまでに20分ほどかかるので、例えば広場恐怖症の人は乗り物に乗る時間を逆算して服用し、苦手な状況でも発作が起きなかったという事実を積み上げていく。この病気は、症状が起きなければ起きないほど治りやすいんです」

重篤な人の中には外出するのが怖く、自宅に引きこもってしまうケースもある。

「その場合は、日中の空いている時間に各駅停車に一区間ずつ乗るという練習をします。その距離をだんだん広げていく。これを行動療法と呼んでいます。どうしても状況を克服できない人は状況を避ける場合もあります。極端に言えば、電車に乗らない。私が診ていた患者さんの中には、自転車で通えるところに職場を移した人もいます」

サラリーマンのほうが克服しやすい

精神障害を抱えている人には、十分な休養と無理のない状態が必要だと思われがちだ。しかしパニック障害の場合は少し事情が異なる。

「体調管理は重要ですが、パニック障害は精神障害の中では比較的症状が軽く、病に立ち向かっていくことが可能なレベル。薬の服用で見違えるように克服した人もいます。実は自営業や専業主婦などに比べて、サラリーマンの方のほうが克服しやすい。経済的に追い詰められていない人、あるいは毎日外出する必要がない人は、『治さなければ』という強制力が弱く、慢性化しやすいのです。サラリーマンの場合、毎日会社に行かなければならないので、薬を服用して多少無理してでも通勤することが逆に功を奏する。ただし、うつ病を合併しているときなどは長引くケースもあるので、注意は必要です」