頑固になった、キレやすくなった……。そのとき「年寄りはそういうものだ」とあきらめてはいけません。対処が遅くなれば、事態はより悪化します。今回、3つのテーマに応じて、専門家にアドバイスをもとめました。第3回は「老年期うつ」について――。(第3回、全3回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年9月3日号)の掲載記事を再編集したものです。

要注意! 増加している、高齢者のうつ病

皆さんの中には、お盆や夏季休暇に実家に帰り、ご両親と久しぶりに再会したという人も多いでしょう。そのとき、ご両親の様子に、次のような変化はないでしょうか。

「父は若いとき、新聞やテレビが好きでよく見ていたのに、帰省してみたら、新聞は読まずに積んだままになっていて、テレビもつけていなかった」
「父はゴルフや釣りが趣味で、社交的な明るい性格だったのに、昨年に母を亡くしてからは、人付き合いがめっきり減って、ゴルフや釣りにも行かなくなった。家では、昼間からお酒を飲むようになった」
「母は昔、家事が得意だったのに、実家に行ってみると、ゴミや洗濯物がたまっていた。炊事も面倒になり、出してくれた料理も出前で頼んだもの。最近では、近所のスーパーにも行っていないらしい」
「しばらく見ないうちに、母がげっそりとやせていた。聞いてみると、夜はよく眠れず、食欲もないという」

写真=iStock.com/Dean Mitchell

もし、そうした変化があったとき、「もう年だから仕方がない」と済ませていないでしょうか。しかし、もしかしたら、「うつ病」になっているかもしれません。

慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の三村將教授は、うつ病は高齢者にも多いと次のように語る。

「うつ病というのは全年代にあるような病気で、高齢者も例外ではありません。最近は高齢者の人口が増加しているので、うつ病も高齢者の患者さんが増えています」

うつ病は10人に1人の割合でかかると言われているほど身近だ。年を取れば取るほど心の耐性も弱まるうえに、うつ病の発症のきっかけが増えていくため高齢者のほうがリスクは高いと言える。