「繰り上げ受給」と「繰り下げ受給」どっちが得か

年金は、基本的には65歳から支給されますが、希望すれば、60歳から70歳のあいだなら、好きなタイミングでもらい始めることができます。

65歳より早くもらい始めることを「繰り上げ受給」といい、65歳より後にもらい始めることを「繰り下げ受給」といいます。65歳よりも早くもらい始める「繰り上げ受給」では、1カ月早まるごとに年金額が0.5%減額されます。

例えば60歳からもらい始めると、0.5%×12カ月×5年で65歳からもらい始めるよりも30%支給額が減ります。65歳で10万円の年金をもらえる人だとすれば、60歳でもらい始めると月7万円に支給額が減るということです。

この場合の損益分岐点は、76歳。30%の減額は一生続くので、75歳までに死ぬと、60歳からもらい始めたほうがよかったことなり、76歳より長く生きれば、65歳からもらったほうがよかったということになります。

65歳より後にもらい始める「繰り下げ受給」では、1カ月遅くなるごとに年金額が0.7%ずつ加算されます。例えば、70歳からもらい始めると、0.7%×12カ月×5年で42%支給額が増えます。65歳で月10万円もらう人なら、70歳まで支給を遅らせると、70歳から月14万2000円の年金をもらえます。

この場合の損益分岐点は、81歳。80歳までに死ぬと、65歳からもらい始めたほうがよかったとになり、81歳以上生きれば、70歳からもらったほうがよかったことになります。

図表3:「繰り下げ」なら76歳以上で損、「繰り上げ」なら81歳以上でトクをする(画像=『年金だけでも暮らせます』)

健康に動ける「健康寿命」も考慮すべき

もちろん、人の寿命は誰にもわかりません。また、「平均寿命」だけでなく、「健康寿命」も考慮したほうがいいでしょう。「健康寿命」は、身体に支障がなく、健康に動ける平均的な年齢、男性72.14歳、女性74.79歳(厚生労働省・平成28年)。ですから、額は少なくても遊べるうちに年金が欲しいという人は、支給開始年齢を早めるという選択も考えられます。

けれども、これからは「人生100年時代」。あまり早くからもらってしまうと、少額しかもらえないので長生きしたらお金が足りなくなってしまうかもしれません。それが心配なら、働き続けられるうちは働いて、年金はそれ以降にもらうという選択もいいでしょう。