慰安婦財団を「解散する」と一方的に発表

文大統領は国連演説で「わが国は『日本軍慰安婦』被害を直接経験した」と、慰安婦問題にも言及した。韓国の大統領が国連で、直接的な表現で慰安婦問題を取り上げるのは初めてのことだが、15年12月の従軍慰安婦問題に関する日韓合意において両政府は国連など国際社会の場で慰安婦問題を巡って相手を非難するのは控えようと申し合わせをしている。文大統領はこの合意をいとも簡単に破棄したのだ。

さらには15年の日韓合意に基づいて日本政府が10億円を拠出し、韓国政府が設置した「和解・癒やし財団」、いわゆる慰安婦財団を「解散する」と一方的に発表した。日本が拠出した10億円を財源に元慰安婦や遺族に現金を支給するのがこの財団の主な事業で、合意時点で存命だった元慰安婦の7割以上に現金(1人約1000万円)が支給されたそうだ。

しかし、元慰安婦の一部や支援団体は合意内容に反発して、日本への拠出金の返還や財団の解散を求めてきた。18年1月には文政権は財団の運営費を韓国政府の予算で充当することを決定、つまり元慰安婦や遺族に支給された現金の原資は日本の拠出金ではないという形にしたのだ。すでに理事の大半が辞任して、財団は運営停止状態だったという。

慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決」しているはず

文大統領は「日韓合意は国民の支持が得られない」という理由で財団を解散した。拠出金を支払った日本に何の断りもなく、10億円を返還するつもりもないようだ。しかし、15年の日韓合意をもって、慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決」しているはずで、財団はその象徴のようなものだ。それを一方的に解散するというのは慰安婦問題を個別に蒸し返す、という明確な意思表示であり、文大統領としては大衆迎合、国民感情優先で国と国の外交的な約束事を反故にしても構わないと思っているのだろう。

国連演説から慰安婦財団の解散、そして日本企業に賠償を求める元徴用工判決という一連の流れを整理して考えると、日本にとっての文在寅リスクというものが急激に顕在化してきていると思う。

憲法改正が安倍首相のライフワークであるように、文大統領は心の底から祖国統一を願い、自分の政権でそれを成し遂げたいと思っているようだ。このまま南北融和が進んでいけば、朝鮮戦争の終結が宣言され、南北の平和条約締結へと進んでいく。トランプ大統領は予測不能の性格に加えてディール主義者だから、条件次第でCVIDなき北朝鮮の非核化を認めるかもしれないし、核を残したままの南北平和条約締結もありうる。