「みんなインターンに行くから私も行く」と多くの学生は話す。もちろんインターンに参加することは、それだけでも意味があるが、「インターンで何を知ることができれば参加してよかったとなるのか」「何の目的で参加するのか」が抜け落ちてしまっている。それでは何社インターンに行こうが、学びが少ないままになってしまう。

学生にとって就職活動は、単に就職先を見つける場ではなく、自分の強みや特徴を考えるなかで、キャリアについて初めて考える機会と言ってもいい。

世に発信される情報は指数関数的に伸び、様々な情報が得られやすくなったが、反対に、必要・不要、有効・無効の分別がつきにくくもなってきた。

本来であれば、学生自身が社会や企業で働くうえで、必要な捉え方や考え方を知る必要がある。しかし、学生は、知名度のある会社やイメージのいい業界、楽しそうな仕事、福利厚生、地元だからといった観点で企業を選びがちだ。言い換えればそれ以外に選ぶ理由を持っていないのだ。そうすると、売り手市場の現状では、企業が学生のレベルに合わせてしまうケースが多い。だが、採用活動を成功させるためには、企業が学生に社会で生き抜くための考え方を伝えていくことが大事だ。

とくに厳しい採用活動が続く中小企業にとって大切なことは、学生から「大企業より中小企業を選ぶべき理由は何か」と質問されたときに、ちゃんとした回答を用意できるかだ。その回答に学生が納得して、初めて中小企業は就職先の選択肢に入ることができる。

企業規模以外にも社会、キャリア、人生といったことの捉え方や考え方を企業として、ちょっと先に社会人になった先輩として、出会った学生に伝えていく。頭ごなしに理解させるのではなく、学生自身が納得することが大切だ。最悪なのは、企業が伝えることを整理していない状態で採用活動をすること。採用が難しいといわれる今日、企業は学生と「自社に入社する理由」を考えることが採用成功の近道だ。

(写真=時事通信フォト)
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