病気、介護、お金、片付け、空き家、お墓……。「実家」のさまざまな問題を解決するにはどうすればいいのか。「プレジデント」(2017年9月4日号)の特集から処方箋を紹介する。第4回は「財産横取りリスク」について――。

勧められても安易に申し立ててはダメ

日本にはおよそ20万人の成年後見人がおり、年間3万~4万件の成年後見が新たに開始されています。2000年に成年後見人制度が開始された直後はそのうち9割が家族による親族後見人でしたが、ここ数年は弁護士、司法書士などによる専門職後見人の割合が高まっており、新規後見については7割にも達しています。

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私は一般社団法人「後見の杜」の代表として、悪質な後見人に泣かされている被後見人やその家族のために活動しています。その立場から見ると、専門職後見人の激増は「弁護士や司法書士のために割のいい仕事をつくりたい」という法曹界の意向が働いた結果としか思えません。いまや家族が成年後見を申し立てても、家族ではなく、家庭裁判所側が一方的に選任してきた見知らぬ法曹関係者が後見人となるケースがほとんどです。

家族が認知症を発症し、銀行からお金を引き出せなくなったり悪徳商法の標的になったりした場合、銀行や警察からは地域包括支援センターや社会福祉協議会に相談に行くことを勧められます。そしてこれらの施設に相談に行くと、ほぼ確実に「成年後見人をつけるしかありません」と言われます。「手続きのやり方はわかりますか」と畳み掛けられ、その場で弁護士や司法書士の電話番号を渡されたりしますが、簡単に応じてはいけません。

成年後見人の申し立ては本来、収入印紙代などを除けば無料でできます。申立書は用意された項目にチェックマークを入れる程度の、誰でも2時間もあれば書ける内容です。ところがうっかり弁護士などに申し立ての代理を頼んでしまうと、日弁連が公開している費用の目安が10万~20万円であるところ、60万円もの「申立書類作成手数料」を要求されることがあるのです。

申し立てには認知症であることを確認するための医師の診断書も必要。医療保険の適用外で、1万円ほどかかります。また家裁が必要と判断した場合、鑑定医に診断を命ずる場合があり、その場合はさらに10万円程度かかります。しかしこれらは成年後見にかかる総費用のほんの一部にすぎません。