本心は違っていても「好きだから行く」と答える

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だから私も「なぜ戦場に行くのか」と聞かれても「好きだから行く」と答えている。本心は違っていてもだ。

日本は島国で視野も狭い。もっと世界各地で起こっていることを知ってそこから学び、この国の政策などに活かしていかなくてはならないが、日本の大衆にとって異国の紛争は「遠い」出来事、関心外の問題でしかないのだ。

国家、マスコミ、教育、あらゆる要素が積み重なって生まれたこの日本の現状は、根本的に変えなくてはならないと私は考えている。危険地帯に行くべきではない、などという一部大手メディアもあるが、「伝える」ことこそがメディアの使命ではないだろうか。

取材にもっとも必要なのは「セキュリティ」

安田君のケースを、自己責任かどうかといった感情的な論争で片付け、忘れ去ってはならない。必要なのは、事件がなぜ起きてしまったか、という原因の追求だ。海外では、こうした事件が起きるたびに専門家による原因分析が行われ、経験として蓄積されている。

危険地帯での取材にもっとも必要なのは、「セキュリティ」だ。いまメディアが騒ぎ立てている「危機管理」、つまりどう対処すべきか、という問題ではなく、それ以前に危険の存在を察知して回避することが重要なのだ。

ここでのセキュリティとは、すなわち「情報ネットワーク」だ。戦場では刻一刻と事態が変化する。その情報を掴み、的確な判断を下す必要がある。