深夜酩酊して他人の家に入り込み住居侵入罪で罰金刑に処せられた社員を懲戒解雇した「横浜ゴム事件」。最高裁は、私生活の範囲内で行われた事件であり、罰金刑にとどまったこと、社員が管理職ではなく、会社の体面を著しく汚したとまではいえないとして、解雇を無効とした(1970年7月28日判決)。

職種によっても裁判所の判断は異なる。バス会社のバス運転手が、休日に多量の酒を飲んでマイカーを運転し、罰金刑に処せられた事案では、運行の安全確保を至上命令とする会社の立場を汲み、千葉地裁は解雇を有効とした(76年7月15日決定)。

では、もし警察に逮捕・留置されてしまったら……。自分からは何一つできない。家族への連絡はおろか、被害者への謝罪もままならない。

そんな状況下、即刻すべきことがある。 当番弁護士制度を利用、もしくは知り合いの弁護士を通して示談交渉してもらうことだ。示談が成立するか否かによって、検察側の対応も、勾留、起訴へと進むかどうかが変わってくる。“まずは示談”が重要なのだ。

とはいえ、こうした事実が会社の知るところとなれば、何らかの処分は避けられない。ここ数年、大手企業を中心としたコンプライアンス重視を背景に、処分の厳罰化が進んでいるからだ。会社としての法令遵守が、社員一人ひとりにまで問われるようになったのである。

「日本では、酒の上での不祥事には寛大な傾向がありました。しかし世の中の動きに合わせ、同じような事案でも処分の内容は、以前より1~2ランク重くなりがちな印象があります」(石井弁護士)

刑事事件の加害者になってしまった損失は、会社の懲戒処分だけにとどまらない。弁護士費用や示談後の和解金や補償など経済的な損失も馬鹿にならない。略式起訴の罰金刑で済んだとしても数十万円はかかる。

また、刑事事件として起訴は避けられても、民事訴訟で損害賠償を請求される可能性もある。やはり日頃からの“火の用心”が大切なのだ。

(ライヴ・アート=図版作成)