後藤専務も「研修に参加することは自分が抜けたチームに迷惑をかける、家族にも迷惑をかける、さらに会社もある意味で犠牲を払っていることは本人も自覚しています。それに報いるためにもあらゆるものを貪欲に吸収し、戻ったら現場に還元しようと、よい意味でのプレッシャーもかかっている」と指摘する。

専門教育は演習や実験を多く取り入れるなど現場に即した徹底した実践教育がメーンだ。共通科目である品質保証、コスト知識、プラントケア知識、電気設備などを学習。さらにプロセス科、機械科に分かれて専門技能を深掘りする。たとえばモーターやポンプをばらし、作動の原理や構造、仕組みを学習し、再び組み立て直させる。機械に悪いベアリングを入れ、傷が入った音を聞かせ、感覚と数値でトラブルがいかに発生するかを教え込んでいくといったやり方である。

2008年から英語の同時通訳が入り、アジアの人材も一緒に学ぶ。

2008年から英語の同時通訳が入り、アジアの人材も一緒に学ぶ。

ゼミナール活動は6月にテーマを設定し、専門教育と並行して進められ、成果を12月の修了式の前日に発表する。指導の責任者は同社の技術部門の部長約10人。実際には部長が任命した技術アドバイザーの支援を受けながら課題解決に当たる。成果発表会に備えてプレゼンの練習をして本番に臨む。当日は技術部長、センター長、課長など全社200人が参加。しかも発表内容に対しては容赦のない矢継ぎ早の質問が浴びせられる。

厳しい研修だけに収穫は大きい。栗垣さんは「スクールに来なければたぶん定年まで知ることはなかった幅広い知識が学べます。自分の仕事に関係ないことはなかなか学ぼうとしませんが、ここではそれを教えてくれますし、問題解決するうえでの視点も広がりました」と語る。まさに、目的とする全体最適の視点だ。もう一つの収穫は当初からの狙いであった研修生とのネットワークの構築だ。

「ネットワークを通じた技術的交流は卒業後も続けていきたいですね。同じような問題はどこの職場でも抱えています。また、得意、不得意の分野はそれぞれ違いますし、この問題は彼に聞いたらいい、とメールでやりとりしながら問題解決を図ることもできます」(栗垣さん)