モノのかたづけに対する取り組みは、その人の言葉に力を与えてくれると同時に、コストの削減という利益をもたらします。コスト意識は、かたづけ思考の指針を実践していくうえで、リード・マイセルフとともにリーダーが念頭に置いておきたい重要事項です。

会社がジャングル化する「負のスパイラル」

かたづけができていない会社では、年末の大掃除などの際、備品のストックがごっそり見つかることがあります。

私がコンサルティングに伺ったある会社では、倉庫から未使用のコピー用紙が大量に出てきました。その倉庫はモノがあふれ、人が出入りするのもひと苦労。そんな中、社員の誰かが倉庫の奥のコピー用紙のストックに気づかず発注し、新しく届いたコピー用紙を、そのまま倉庫の入り口付近に置いたようなのです。するとほかの社員も、そこからコピー用紙を取り出すように。やがて倉庫の奥のコピー用紙の存在は忘れ去られてしまいました。

「元の場所に戻すのが面倒だから」と、倉庫の入り口付近にモノをためる会社は少なくありません。そして大半は整理も整頓もされず、置き切れなくなると適当に奥へと押し込みます。すると奥に隠れて見えなくなり、忘れられ、見当たらないので新しく買って……。

このようにして倉庫は、簡単にジャングル化してしまいます。これは「しまう」→「押し込む」→「隠れる」→「忘れる」という、負のスパイラルが膨らんだ結果です。

前述のケースでは、購入したコピー用紙が使われずにいたという「経費」の無駄と、倉庫がほとんど機能しない=スペースが有効活用されないという「スペース」の無駄、適当にしまわれているので、探すのに時間がかかることから「時間」の無駄、さらに、その分の「人件費」の無駄という、4つのロスが生じています。こうした無駄なコストはすべて、かたづけることで防げるものばかりです。

かたづけのメリットを知れば、自分から動くようになる

リーダーがコスト意識を持ち、全員がかたづけを意識すれば、ロスがなくなり、会社の利益につながります。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/JohnnyGreig)

チームにかたづけを浸透させるには、「当事者意識を奮い立たせること」が肝心です。メンバー全員がかたづけを自分事として捉えることで、初めてチームのかたづけが進んでいきます。

かたづけを自分事にするには、かたづけることで自分にどんなメリットがあるのかという、自己利益に気づくことがポイントです。私がコンサルティングを行った企業からその後の様子を聞くと、今も熱心にかたづけを続けている人というのは、自分なりにメリットを見いだしていることが多いのです。メリットを知れば、人は自分から動くようになります。