捨て鉢になり、後妻に全部やるという発想に

結局、遺産目当ての女に引っかからぬためには、どんなことに気をつけるべきなのか――今回取材した4人から、申し合わせたように同じ答えが返ってきた。

それは「家族が普段から仲良くすること」。今さら何をと思うかもしれないが、“家を守る”には法律や合理的な方法だけでは解決できないことが多い。

「もめそうで相続の相談に来る家族は、きょうだいそれぞれお金が欲しい状態。法律で解決しようと言い出した時点で、すでに話し合いができる余地がなくなっており、家族の関係が崩壊しているケースも多いのです」(高野氏)

子どもや孫に無視された老親は「もういいよ、あいつら」と捨て鉢になり、往々にして「後妻に全部やる」という発想に至る。「配偶者が亡くなると男性は孤立する人が多い。優しくされたり親身にされたりすると、コロッと騙されてしまう」(金澤氏)のである。高齢者の孤独感や寂しさにつけ込む類い稀なる能力を持つ者に対抗するには、1人暮らしの老親に子どもや孫が定期的に連絡を取り会いに行く、電話でちょくちょく話す、手紙を出す、些細な手伝いをするなど、法律でどうこうするより、そういう繋がりの積み重ねを続けるしかない。怪しい連中につけ込まれぬためには、普段から家族の絆を深め、それを周りに示すことが一番大切だといえよう。

河野祥多
弁護士
むくの木綜合法律事務所代表。1972年、埼玉県生まれ。94年早稲田大学理工学部電子通信学科卒業。2004年弁護士登録。07年より現職。専門は相続など。
 

高橋安志
税理士法人安心資産税会計代表税理士
1951年、山形県生まれ。76年中央大学卒業。税理士向け講演を多数。『相続トラブル解決事例30』ほか著書20冊超。
 

高野眞弓
税理士法人アイエスティーパートナーズ代表税理士
1943年、東京都生まれ。慶應大学大学院法学研究科特別講座修了。74年税理士登録。2016年より現職。
 

金澤秀則
児玉総合情報事務所代表
1988年より探偵業に従事。2012年より現職。政治犯、諜報関係、殺人事件などでも実績。著書に『こんなにおもしろい調査業の仕事』。
 
(撮影=的野弘路、石橋素幸、永井 浩 写真=AFLO、時事通信フォト、The Asahi Shimbun/Getty Images、共同通信イメージズ、iStock.com)
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