新築マンションのチラシに「敷地内に認可保育園整備予定」と書いてあることがある。しかし飛びつくのは禁物だ。行政評論家の大原瞠氏は「マンションの住民に優先権があるわけではない。併設されていても、マンション住民の子どもが1人も通っていない保育所が実際にある」という。なぜそんなことになるのか――。

※本稿は、大原瞠『住みたいまちランキングの罠』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/maroke)

「至近に認可保育園あり」をうたうマンションの罠

新築分譲マンションの広告の中に、こんなセールストークが載っていることがあります。

「通勤時の送り迎えに便利な、マンションから徒歩○分、○○○mの至近に認可保育園あり」
「当マンションと同時期に完成する再開発ビルに認可保育園整備予定、子育て世帯に安心!」

そんな広告を見ると、もうじき子どもが生まれ、その後1年ほどで育休から仕事に復帰したいと思っている世帯にとっては、まさにうってつけの物件に見えるかもしれません。もし読者のあなたもそう感じたのなら、デベロッパーの作戦に思い切り引っかかっていますね。

まず、広告をよく見てください。「保育園には、マンション入居者の入園が約束されるわけではありません」という注意書きが小さい文字で併記されていませんか?

認可保育園のデメリットは「希望通りに決まらない」

保育所事情に詳しい方には釈迦に説法になってしまいますが、現在、いわゆる保育園を大まかに分類すると二種類あります。一つが認可保育所(認可園、あるいは単に「保育所」と呼ぶこともあります)、もう一つがそれ以外(認可外保育施設)です。

よくいわれるように、認可保育所のほうが施設や職員配置などのさまざまな面で基準が厳しい分、保育環境が優れているだけでなく、公的補助も手厚く利用者負担は低いとされ(実際は世帯によるのです。詳しくは後述)、それゆえに利用希望者が殺到します。

しかし、マスメディアではまったく語られない認可保育所のデメリットをみなさんはご存じでしょうか。はっきりいいましょう。運よく認可保育所に入れることになっても、自分が希望した(たとえば、通勤動線的に都合がいい場所にある)施設に入れることはまずなく、それこそ駅とは逆方向で少々不便な場所にある施設を提示され、それでも入れるだけマシと考えて送り迎えしなければならない場合が多いことです。