パナソニックは昨年、創業90周年を迎えた。10月1日には松下電器産業から現在の社名に変更し、国内で親しまれてきた「ナショナル」のブランドも、パナソニックに統一した。

<strong>大河原克行</strong>●おおかわら・かつゆき 1965年生まれ。IT業界専門誌編集長を経て2001年からフリージャーナリスト。IT、デジタル家電分野を中心に取材、執筆活動を続ける。主な著書に『ソニースピリットはよみがえるか』(日経BP社)、『松下電器 変革への挑戦』(宝島社)など。
大河原克行●おおかわら・かつゆき 1965年生まれ。IT業界専門誌編集長を経て2001年からフリージャーナリスト。IT、デジタル家電分野を中心に取材、執筆活動を続ける。主な著書に『ソニースピリットはよみがえるか』(日経BP社)、『松下電器 変革への挑戦』(宝島社)など。

長年、同社をウオッチし続けてきた大河原克行氏は、社名変更とブランド統一の狙いを次のように解説する。

「パナソニックの名のもとに、すべてのリソースを集中させ、ベクトルを一つにする。そして、2018年の創業100周年までに、世界でナンバーワンの電機メーカーになる。そのための決断だったのです」

しかし、新たな船出を邪魔するかのようにリーマン・ショックが襲った。世界同時不況の荒波にもまれ、自動車、電機などを中心に日本企業の経営環境は悪化している。

「社名変更とブランド統一について、大坪文雄社長の決断が半年遅れていたら、いまだに松下電器の社名とナショナルのブランドを掲げていたでしょう。言い換えれば、世界で戦うパナソニックの土台づくりは、3~5年は遅れた。創業100周年の年には、世界でナンバーワンの電機メーカーという目標達成も遅れたかもしれません。経済情勢が一変したなかでの決断は、新たな区切り、スタートという意味で実は絶妙のタイミングだったと思います」

大河原氏にとって、パナソニックをテーマにした著書は、これで2冊目となる。1冊目は03年に出版した『松下電器 変革への挑戦』である。

「当時の松下を外から見れば業績悪化で瀕死の状態でしたが、中村邦夫社長(現会長)による“破壊と創造”への取り組み、30代、40代社員の積極登用などで、社内は生き生きしていた。これが功を奏し、重くて遅い企業体質から脱却した。中村時代は日本で戦える会社への転換とすれば、大坪時代は、世界で戦える会社への転換であり、“軽くて速い”企業体質の強化ですね。そのための第一歩が社名変更、ブランド統一なのです」

社名は変わったが、創業者である松下幸之助氏の理念はもちろん残っている。

「例えば、ソニーの社員は『SONY』というブランドに対して強いプライドを持っています。これに対してパナソニックの社員は、幸之助氏の理念に対して強い思い入れがある。これだ、と社員のベクトルが向いたときの強さは、パナソニックの取材を通じてものすごく感じた」

本書には世界企業・パナソニックのマネジメントの考え方、進め方も随所に登場する。特に40~50代の世代に読んでほしいという。