日本大学アメフト部の悪質タックル問題で、またあらたな事実が明らかになった。ケガを負わされた関西学院大学のコーチたちは、試合当日は悪質タックルに気づかず、試合翌日になってSNSでの「炎上騒ぎ」から事実に気づいたという。一連の問題はSNSがなければ、隠されたままだったかもしれないのだ。ごまかしや言い訳が通用しない「SNS時代の危機管理」のあり方とは――。(前編/全2回)
写真=時事通信フォト

試合当日、関学大も悪質タックルに気づかなかった

アメリカンフットボールの日本大学と関西学院大学の定期戦で、日大の選手が関学大の選手に危険なタックルをしてケガを負わせた。この問題が日本中の関心を集めるようになったきっかけは、SNSに投稿された試合の動画だった。

SNSで話題になっていく様子を、被害者である関西学院大学は、どのように見ていたのか。筆者は6月1日、関西学院大学の広報に取材を申し入れたところ、4日の昼に小野宏ディレクターから、携帯に電話をもらった。以下はそのときのやりとりだ。

【田淵】「日大の悪質タックルに気づいたのは、いつだったのでしょうか?」

【小野】「問題のタックルシーンですが、試合当日、監督とコーチ、そしてスタンドから観戦していた私も、まったく気づかなかった。ボールの行方を追っていたからです」

【田淵】「試合中は気づかなかった?」

【小野】「気づいたのは翌日です。試合後OBとの懇親会があって、夕方6時の新幹線で帰りました。その日はみんな疲れていて、車内で話題にもならなかった。翌日、鳥内(秀晃)監督は休みで大学に出てこなかった。夕方ごろかな、大村(和輝)アシスタントヘッドコーチからメールが来たんです」

【田淵】「どんなメールですか?」

【小野】「SNSに動画が出ている。異常なプレーが問題になっているから、見てほしい、というものでした。それで記録用に撮っている試合当日のビデオで確認しました」

【田淵】「それで異常なタックルを発見した?」

【小野】「そうです。なんだ、このタックルはと。私は大学の職員ですが、コーチ経験も長いので異常性にすぐ気づきました。これは不自然だと。すぐに関係者で集まり、この問題を話しあいました」

【田淵】「第1回の抗議文を送ったのは5月10日でしたね。その日、日大アメフト部はホームページに謝罪の告知を出していました。抗議文を送る前、そうした告知は見ましたか?」

【小野】「いいえ、見ていません。何度もビデオで検証して、このような異常な反則タックルがなぜ起きたのか不自然である、常識では考えられないプレーだと考え、抗議文を送付したのです」

つまり関学大が日大の悪質タックルに気づいたのは試合の翌日。しかもSNSを通じて外部から指摘を受けてからだった。また関学大の抗議について、「日大アメフト部の謝罪文をみてから、抗議したのではないか」という指摘もあったが、そうではないことがハッキリした。日大の対応とは関係なく、ビデオ検証の結果、関学大は抗議を行ったのだ。