人材の成長が、会社の成長

私は、社員教育に時間もお金も、惜しみなく投入しています。たとえばすでに、10年前の第44期で、粗利益「25億円」のうち「約1億円」を教育研修費に注ぎ込んでいます。

実際に使用されている、B6サイズの経営計画書(画像提供=武蔵野)

同じ事業規模の会社に比べて、社員教育にかけるお金は、かなり多くなっています。取引をしている銀行から、「教育研修費を半分にして、もっと利益を出したほうがいい」という指摘をいただいたことがあります。

ですが私は、社員教育を怠ったとたん、業績も尻つぼみになると考えています。社員の定着と会社の成長のためには、教育研修費を惜しんではいけないのです。これからの時代は、販売戦略ではなく、「人材戦略」に力を入れた会社が勝ち残ります。

中小企業にとって、人材の成長が、会社の成長です。

「人」と「利益」は比例関係にあって、人が成長すれば、それにともなって会社の業績も良くなります。商品やサービスはどの会社もすぐにまねできますが、人そのものは決してまねできません。

小手先のスキル教育では社員は育たない

社員教育に力を入れている会社はほかにもありますが、多くの会社は、営業教育や技術教育など小手先のスキル教育にとどまっていて、会社の価値観や方針を教えていません。だから、「技術が流出」などと大騒ぎするのです。「経営計画書」は会社の価値観や方針を、全社員が共有するために非常に有効です。

社員教育は、本来は無形固定資産ですが、測るモノサシがないから、全額「経費」になります。利益が出ている会社が社員教育をすると節税にもなります。たしかに中小企業にとって、社員教育にお金をかけるのは、大変です。しかし、私が指導してきた会社の中で、「社員教育にお金をかけすぎて倒産した会社」は、1社もありません。

中小企業にとって、「お金と手間をかけて社員を教育する」以外に利益を出し続ける方法はないのです。

小山 昇(こやま・のぼる)
武蔵野 社長
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒。85年武蔵野入社、89年から現職。670社以上の経営指導を手がける。国内で初めて日本経営品質賞を2度受賞(2000年、10年)する優良企業に育てる。
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