『お金持ちはどうやって資産を残しているのか』(あさ出版)の著者で、「ランドマーク税理士法人」(税理士)を率いる清田幸弘代表は、「〈経営計画書〉が人材の定着にひと役買っている」と感じています。

「会計業界は、頻繁に転職を繰り返す業界ですから、採用や人材の定着が難しいんです。ところが、〈経営計画書〉をつくって、採用と社員教育のやり方を見直し、方針を打ち出したことによって、社員の価値観がそろうようになりました。〈経営計画書〉の運用と並行して、環境整備(毎朝30分、身の回りの整理整頓をする社員教育活動)にも力を入れた結果、離職率は業界平均よりも低くなっています」(清田幸弘代表)

内定者の母親にも経営計画書を見せる

2017年4月に、「20人」の新卒が武蔵野に入社しました。2018年は「26人」です。そのうちのある内定者の母親は、「中小企業が6人も新卒を増やすのは、新卒がすぐに辞めてしまうからではないか」「武蔵野という会社は、ブラック企業なのではないか」と不安になって、わが子に「武蔵野に入社するのは、やめたほうがいい」と苦言を呈したといいます。

経営計画書の中身(画像提供=武蔵野)

その話を知った私は、「今期」の「経営計画書」と「前期」の「経営計画書」の「配付先一覧」をコピーしてその内定者に渡しました。

配付先一覧には、武蔵野の全社員の氏名と序列が記載されていて、今期と前期の配付先一覧を見比べてみると、「人が辞めていない」ことが明らかです。「経営計画書」を見た母親は、「人も辞めていないし、利益計画も要員計画もしっかりしている。この会社なら安心なので、武蔵野に行きなさい」と考えを一変させました。

「人が集まらない時代」に武蔵野が新卒採用で成果を上げているのは、「経営計画書」が採用の道具になっているからです。

「株式会社エネチタ」(エネルギー、リフォーム、不動産)の後藤康之社長も、「〈経営計画書〉が採用の道具になっている」と実感しています。

「手帳型の〈経営計画書〉をつくったところ、新卒の内定辞退が格段に減りました。昨年は大卒が6人でしたが、今年は11人に増えています。当社では内定者家庭訪問を実施しているのですが、その際、ご両親に〈経営計画書〉をお見せして、『こういうことをやっています』と会社の説明をさせていただきます。すると、ご家族の方々も安心してお子さんを預けてくださいますね」(後藤康之社長)