失敗しても安全な環境であることを丁寧に伝える

しかし、産業構造が大きく変化する中、上司に指示されたことを過不足なくこなすだけの会社は、生き残れない。真っ先にAIに代替されてしまうだろう。また、今後は女性や高齢者、外国人など、多様な背景や価値観を持つ人が日本の職場に増える。あいまいな条件でもあうんの呼吸で仕事を進めるというやり方が通用しなくなる。あらかじめ仕事の前提条件や個々の責任範囲などを明確にし、コミュニケーションを密にしながら働くことが、生産性を上げるためにも不可欠になる。

責任転嫁をする部下に、「責任転嫁をするな」と説いても効果はない。その人が「失敗を認めると、よくないことが起こる」と考えていれば、行動は変わらないからだ。「失敗しても大丈夫」と思える職場環境づくりと、上司・同僚との信頼関係の構築が必要だ。

こちらの思いを一方的に伝えるのではなく、聞き役に徹し、相手が抱える不安や不信感をじっくり聞く。失敗しても責めず、チャレンジしたことを評価する。仕事を与える際には、「私もここまでやってみるから、半分やってみよう」と伴走する。こうして関係の質を変えて、失敗しても安全な環境であることを丁寧に伝えるのだ。

これまでの日本企業は一般的に減点主義なうえ、個々の責任の範囲があいまいで、責任転嫁を生みやすい環境だった。今の管理職が若手だったころは、減点主義に基づいた上下関係も職場によっては当たり前だったため、チャレンジして失敗することをよしとする「加点主義管理職」になるのは、簡単なことではない。しかし、今転換を図らないと、その会社の未来はない。

部下への不満は、「責任逃れ」が約4割
「部下に対する不満の理由」を聞いたアンケート調査では、「言い訳をする」が第1位に。「ミスを認めない」を加えると、責任逃れに関わる理由が約4割を占める。
▼対処法
失敗しても大丈夫な加点主義の職場環境をつくる
新井健一(あらい・けんいち)
経営コンサルタント
アジア・ひと・しくみ研究所代表取締役。大企業向けの人事コンサルティングなどセミナーを展開。著書に『いらない部下、かわいい部下』など。