エン・ジャパンの「エン転職」の岡田康豊編集長も「35歳以上のミドルの転職では平均100万円程度下がっている。35歳で前職が500万~600万円なら400万円後半から500万円未満。40代以上で1000万円なら800万円ぐらいに下げて転職するのが普通」と指摘する。

転職時にいったん年収を下げても実力次第で上がる余地は十分にある。藤井編集長は転職で年収が上がる人の共通要素をこう説明する。

「20代は、上司に言われなくても自ら本当にやるべき課題を見つけることができる人。30代は、様々なデータを駆使してスピード感を持って課題を解決できる人。もう1つは社内のリソースだけでなく社外の異質なものと組み合わせて解決する力を持つ人。40代は、社内外の人脈を駆使し、データ処理が得意な人や予算に強い人など異質なメンバーを束ねて成果を出せるプロジェクトマネジメント能力を持つ人です」

とくに40代で転職に成功する人は「20代から培った経験を活かし、新たな仕事で課題を発見することから始め、その課題を解決し、チームを束ねることを繰り返しできるアクティブな人が多い」(藤井編集長)と語る。

ミドル層の異業種への転職成功の分岐点

近年、異業種への転職が増加している。リクルートキャリアの調査では異業種への転職が同業種をはるかに上回る。その背景には「未経験者歓迎の求人が全体の77%を占めている」(岡田編集長)ことに加えて「ほかにやりたい仕事がある」「会社の将来性が不安」を転職理由に挙げている人が圧倒的に多いからだ(DODA調査、17年11月)。自分のキャリアや会社の将来を見据えた転職志向は銀行業界でも顕著だ。大手メガバンクは業務や支店の統廃合を含めた中長期的な合理化策を打ち出しているが、黒澤氏は「銀行を中心に金融業界出身者の登録と異業種への転職が増えている。先行きに不安を感じ、早めに別の業種に転職したいという思いがある」と指摘する。

ミドル層の異業種への転職成功の分岐点になるのが今までの仕事の“棚卸し”ができているかどうかだ。

「大企業出身者であれば一定の専門性と何らかのマネジメント経験があるが、単に課長や部長をやっていました程度しか説明できない人が多い。どういうメンバーに対してどのようなマネジメントをしていたかという方法論や自分の考え方、思想を明確に説明できること、さらに専門性を説明するために仕事の経験の棚卸しをして、得手不得手を整理することが重要」(岡田編集長)