憶するな! 堂々と直球勝負しろ

田内は今もときには、あえて飛び込み営業を行う。飛び込む会社について事前にリサーチして臨むというが、はじめての会社に行って、経営者と会って保険の話を聞いてもらうところまでたどり着くのは、とてつもなく高いハードルではないだろうか。

「ワンフロアのオフィスで、社長が見えるところにいるなら、目が合った瞬間ニッコリ笑顔を送ります(笑)。社長が見えなければ、受付であえて名刺は渡さず、社長にしかわからないような財務関係の話をして、なんとか社長に取り次いでもらえるように持っていきます。社長に出てきていただけたら、『社長にお会いしたくて、思い切って飛び込みました! 一分で帰りますので、ワンチャンスだけください!!』と真正面からアポイントを取ります」

そんなときにも、決してお客さまに媚びる必要はない、と田内は言う。

「なぜなら、営業とはお客さまが知らないであろう商品やサービスを提案できる素晴らしい仕事だからです。私なら相手の会社にとって役に立つ話ができるという自信もあります。自分の仕事が好きで、商品も好きで、自分がやっていることは正しいという確信があるならできるはずです。

臆することはありません。話を聞いてほしいという思いはありますが、営業パーソンもお客さまも人としては対等です。堂々と、直球勝負をするだけです」

営業未経験だった田内は、セールスの仕事を始めたときもストレスを感じることはなかったそうだ。

「数限りない断りも受けてきましたが、それはあくまで、お客さまと自分との考えの違いから生まれるものです。もともと、人と違う考え方や意見を持つことが自分の存在価値にもつながってくると思っています。ですから、それで傷つくことはありません。ある意見があっても、私が全く違う角度からの意見を出したことがきっかけで、話が一気に進むことってありますよね。その係を私が買って出ていると思っています」

お客さまと向き合ってストレスを感じそうな状況でも、田内の考え方はブレることはない。

「長く営業をやっていれば、名刺をゴミ箱に捨てられたり、目の前で折って丸められたりすることもあります。そんなときは『名刺はその人の顔と一緒です。そんなことしたら失礼ですよ』と注意します。私は“言う係”だと思っているんです。知っていて言える人が言ってあげることが大切です。それで商談がまとまらなくても全く気になりません」