銀行の脅威になる、アマゾンのサービス
1994年、ビル・ゲイツは「将来、銀行は必要なくなる」と唱えた。当時は一笑にふされていたかもしれないが、現在、フィンテックの急激な発展によって、銀行は存在意義が問われている。本当に銀行不要の社会は訪れるのか。
まず論を進める前に、「フィンテック」の定義をしておきたい。フィンテックとは、ファイナンスとテクノロジーをかけ合わせた造語で、一般的にはITを活用した革新的な金融サービス事業を指す。
私の解釈としては、ユーザー目線で見たとき、テクノロジーを利用して金融サービスが使いやすくなっていれば、広義のフィンテックと呼んでも差し支えないと考えている。その目線に基づくと、フィンテックに値するサービスを提供して銀行を脅かすのは、さまざまなEC事業者だ。
「いちいち銀行に行かなくてもいい」
たとえば銀行の主要な役割のひとつである、資産運用の機能はどうだろうか。現在の金利で、銀行に預金してもリターンはほとんどない。しかしアマゾンでギフト券を買ってチャージすれば、最大2.5%のポイントがつく。もちろんこれは金利ではないが、現金同等物と見なすことができる。もし入った給料のうち可処分所得でカードを買う人が増えれば、銀行からすると預金獲得の大きなライバルになるだろう。
そのアマゾンは現在、販売サイトの出店業者を対象に、短期融資事業「Amazonレンディング」を展開している。しかし同社のように出店業者の商品販売動向や支払い実績のデータを把握することができれば、それを踏まえてさらに柔軟に資金を貸すことも可能である。出店業者が運転資金を必要としているようなら、予定していた支払期日を前倒しにする。
これによって売掛金の回収が早まって、資金繰りに余裕が生まれるだろう。これは業者からすると、銀行からお金を借りているのとほとんど同じだ。取引していたら商品がさばけ、運転資金もリバランスしてくれる。「いちいち銀行に行かなくてもいい」という発想になるだろう。