この数年、「ゲーミフィケーション」という仕組みへの注目が高まっている。クイズやくじ引き、経験値といったゲームの要素を取り入れることで学習効果を高めるものだ。研究成果の蓄積も急速に増えつつある。具体的にどう取り入れればいいのか。第一人者である東京大学の藤本徹特任講師に、イーオンの三宅義和社長が聞いた――(後編。全2回)。

ゲームは学習効果を上げる一つの方法である

【三宅義和・イーオン社長】藤本先生は、ゲーミフィケーションに関する研究ユニット「Ludix Lab」を立ち上げ、その責任者を務めています。ワークショップや公開研究会などを開催されているそうですね。日本ではゲーム、とりわけスマホ配信のゲームは大きな産業になっていますが、そうした遊びと学習の組み合わせには、学校の教師や親御さんからの反発も予想されます。

【藤本徹・東京大学 大学総合教育研究センター特任講師】「遊び」というと、ふざけ半分という認識があるからなのか、遊びの要素を入れると「もっと真面目にやりなさい」となります。でも、遊びでも真面目にやっていると、気がついたら、いろんなことができるようになる。それは「学び」の基本ですから、私は非常に有効な手段だと思っています。

藤本徹・東京大学 大学総合教育研究センター特任講師

最近になって、ようやくわれわれの研究が、学習効果にもつながるということが理解されだした気がします。海外ではそういう事例がたくさんありますので、それらを日本に伝え、普及していく活動が大事です。

【三宅】海外での成功事例はたくさんありますか。

【藤本】あります。この分野でも、海外には研究センターがいくつもあり、この10年で何百何千という数の研究論文が出ています。英語でも数学でも、「ゲームを使うことで、これだけの学習効果があった」といった研究成果が蓄積されています。

【三宅】日本でゲームと教育は、どのような化学反応を起こしていくのでしょうか。またどうなっていくことを期待されていますか。

【藤本】現状では「ゲームや遊び」と「勉強や学習」は完全に切り離されています。学校では「授業中」と「放課後」といった違いでしょうか。けれども、「両者はもっとつながっている」と強調したいですね。例えば、子どもが英語版の「ポケモンGO」をプレイすれば、そこに出てくる英単語はどんどん覚えます。

遊びの中で学びを意識したサービスを提供する。または教育の中にゲームの要素を取り込んでいく。そうなれば、とてもおもしろい相乗効果が生まれ、より深い学習ができると思います。