語学習得にはコツがある。8カ国語を話すマルチリンガルクラブの新条正恵代表は「必要な単語を絞り込み、それを使ってどんどん話すことが重要」という。得意の語学力を駆使して、リオ五輪では通訳ボランティアとして活躍した新条さんの学習法について、イーオンの三宅和義社長が聞いた――(後編。全2回)。

アメリカ留学では外国人の友だちをつくった

【三宅義和・イーオン社長】新条さんは、アメリカの大学を卒業されていますから、英語はもちろん堪能です。それに加えて、中国語、韓国語、スペイン語、タイ語、マレーシア語、トルコ語も話せる。日本語も含めると8カ国語ですね。このうち英語との出合いは、やはり中学校時代ですか。

【新条正恵・マルチリンガルクラブ代表】そうです。私は奈良県出身なのですが、住んでいたマンションに県内ではわりと有名な女子学園の外国人教師が何人かいました。とてもきれいな方たちで、子ども心にもあこがれがあったんでしょうね。毎日、うちの前を通って帰宅するときに、「ハロー!」と声をかけていました(笑)。

新条正恵・マルチリンガルクラブ代表

それと、姉が英会話学校に通っていました。帰宅すると家で大きな声を出してスピーチ練習をしていたんです。そのとき「Hello! My name is Masae.」などと教えてもらい、女性教師を見かけると、その通り話しかけました。そのうち、仲良くなり、家に呼ばれて、お茶をご馳走になりました。そのとき何を話したか今では全然覚えていませんが。

【三宅】そういう積極的な性格は、英語の習得にとても重要ですね。

【新条】そうだと思います。

【三宅】英語以外の言語は、いつ、どのように習得されたのですか。

【新条】関西外国語大学にいたときに、第二外国語として中国語を選択しました。当時は中国ブームで「これからは中国だ」と言われていましたから。1年間、講義を受け勉強しました。

その後、アメリカに留学した際に、一番仲良くなったのが台湾の女子学生でした。せっかく、留学しているのに日本人学生相手に日本語を話していたら英語が習得できませんよね。なるべく、日本人以外の友だちを作るようにしたわけです。台湾では、台湾語と呼ばれる言語もありますが、標準語は北京語を話します。中国語は1年間のベースがありましたから、1年ぐらい一緒に遊んでいると、何とかしゃべれるようになりました。

【三宅】それは才能ですね。外国の友人と1年遊んでいても、普通はなかなか話せませんよ。

【新条】同じ教授の講義を取っていると共通の話題ができます。授業中の話やレポートの課題などを彼女たちに中国語で聞くんです。すると、向こうも驚いて「正恵が中国語をしゃべっている」と、どんどん中国語を話すので、語彙も増えていきます。

【三宅】中国語以外に学生時代に身につけた言葉は何ですか。

【新条】タイ語もそうですね。それも同じような感じで、タイ人の友だちに教えてもらいました。

【三宅】その際、文法とか基礎的な表現といったこともテキストなどで勉強もするのでしょうか。

【新条】基本的には実践オンリーです(笑)。例えば、タイ語は形容詞が後に来ます。「ご飯、美しい」と言ったら「白いご飯」のことです。その応用で、「じゃあ、美しい人は、人、美しいなの?」と聞くと、「そうそう」というようにして覚えていくわけです。