北朝鮮もルーマニアのチャウセスク政権のように、何かの拍子に一気に崩壊するかもしれない。チャウセスク政権崩壊のプロセスは謎の部分が多いが、チャウセスクと金日成は親交があり、金日成の影響を受けてチャウセスクは北朝鮮式の統治手法をとっていた。

にもかかわらず、チャウセスク政権は崩壊してしまった。北朝鮮とルーマニアは地政学的な環境が大きく異なってはいるが、北朝鮮式の統治手法に限界があることを示している。

大量のビラを散布したとしても、国内全域で一気に反体制運動を起こすのは簡単なことではない。起爆剤となるなんらかのきっかけが必要となる。その手段として、密輸された小型ラジオによる呼びかけという方法がある。呼びかけをおこなうのは、中国を拠点とした脱北者支援団体が最適かもしれない。

ビラ+ラジオで反体制運動の素地をつくれ

ともかく、現時点でできることは経済制裁とともに、大規模な反体制運動を起こすための素地を作っておくことだ。

経済制裁の影響で極度な生活苦になった時に、散布されたビラを見て反体制運動に呼応する人々が出てくるかもしれない。つまり、「金正恩に不満を持っているのは自分だけではないのだ」と国民ひとりひとりに認識させるのだ。

そろそろ、ほとんど効果のない「口撃」や、空母、戦略爆撃機などを派遣するという「外圧」だけではなく、「内圧」により政権を崩壊させる方法を真剣に模索するべきだ。効果はすぐには現れないだろうが、これが最も現実的な手段といえるのではないだろうか。

宮田敦司(みやた・あつし)
元航空自衛官、ジャーナリスト
1969年、愛知県生まれ。1987年航空自衛隊入隊。陸上自衛隊調査学校修了。北朝鮮を担当。2008年日本大学大学院総合社会情報研究科博士後期課程修了。博士(総合社会文化)。著書に「北朝鮮恐るべき特殊機関」(潮書房光人社)がある。
(写真=時事通信フォト)
【関連記事】
橋下徹「北朝鮮対策ならヤクザに聞け!」
金正恩の下半身まで暴く名物記者の情報源
「北朝鮮」を存続させた2人のダメ指揮官
なぜ北朝鮮は米国の"報復"を恐れないのか
北朝鮮が緻密に積み上げる"脅迫ステップ"