腕時計市場は回復基調にあるが、日本勢とスイス勢で寡占できるとは限らない。ひとつのリスクは米アップルに代表されるスマートウオッチの存在だ。エプソンが高級腕時計市場に参入するのも、センサーなどの「ウエアラブル」の技術によって、大手が寡占する市場を崩せる見込みをもっているからだろう。

時計ブランドでウエアラブル機器事業拡大

エプソンは18年度を最終年度とする中期経営計画で、一般消費者向けのコンシューマー分野の強化策としてウエアラブル機器事業を拡大する方針を打ち出している。腕時計の開発・技術などの「現有資産を活用しウエアラブル機器事業を主柱事業に育てる」(碓井社長)のが狙いで、プリンターやプロジェクターに次ぐ事業に位置づけた。

その布石として、15年には腕時計とウエアラブル機器の両事業を統合し、「ウエアラブル機器事業部」を新設した。今回の高級腕時計市場への参入は、ウエラブル事業の拡大を目指す明確な意思表示に映る。エプソンは16年度で500億円規模というウエラブル事業の売上高を、25年度までに1000億円超へと拡大させる計画だ。

エプソンの直近の業績は、主力のプリンター販売の好調さなどを背景として好調に推移している。18年3月期の連結最終利益は、従来見通しの490億円から580億円に上方修正している。ただし、持続的な成長を果たすには新たな収益事業の柱が不可欠だ。その切り札が独自ブランドでの高級腕時計市場への参入だといえる。思惑通り、未知の市場で結果を出せるかどうか。勝機を得るには、並々ならぬ覚悟とエネルギーが求められるのは言うまでもない。

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