経験と科学によって裏づけられたテクニック
人の心を読み取り、相手を意のままに動かすなんて、おとぎ話だと思うかもしれないが、けっしてそんなことはない。かつてFBIで捜査と行動分析を担当し、犯人を自白させたりスパイを寝返らせたりすることに幾度も成功したジャック・シェーファー博士によれば、経験と科学によって裏づけられたテクニックが存在するのだという。
そこで今回、シェーファー博士に、ビジネスシーンで応用できるテクニックを教えてもらった。今回紹介したものは、いずれも人が無意識に見せる反応やしぐさの意味を知り、それらを見逃さないようにすることに尽きる。特別な能力がなくても、誰にでも習得できそうだ。
【上司・部下編1】あなたは本当に好かれているか?
▼OK!
1. あなたのしぐさを真似る
たとえば、あなたが腕を組んで立っているとしよう。一緒にいる部下が同じ位置で腕を組んでいたら、その部下はあなたに好感を持っている。人間には好きな相手の動作を真似るという傾向があり、これをミラーリングという。逆に、あなたのしぐさに同調しない部下とのあいだには、信頼関係ができていないことを意味する。
2. 眉がさっと上下する
近づくと眉が瞬間的に上下する部下は、あなたに好感を抱いている。これは反射的に出現する6分の1秒ほどの動きで、本人がほぼ無意識のうちに送っている友情のシグナル。「私はあなたのことを脅威と見なしていません」というメッセージなのだ。互いに好感を抱いている人どうしが近づくと、双方にこの現象が起きる。
3. 頭を少し傾けている
あなたを慕っているならば、部下はあなたと話すときに自然と頭を左右どちらかに傾けている。首の両側には脳に酸素を送る頸動脈があり、損傷すれば数分で死に至る。つまり、頸動脈を見せるということは、あなたに脅威を感じていない証拠。逆に脅威を感じていれば、頸動脈を守ろうとする意識が働いて肩をすくめる。
4. 本物の笑顔を見せる
実は嫌っているのに、それを悟られないようにするために、作り笑いを浮かべることはよくある。その笑顔が本物かどうかを見極めることができれば、自分が部下に慕われているかどうかを判断できる。本物の笑顔の場合、両側の頬が上がる動きに合わせて両側の口角も上がり、目じりにしわが寄る。
▼NG!
5. 作り笑いをする
作り笑いの場合は、右利きの人なら顔の右半分が左半分よりも大きく動き、片側に偏った笑顔になる(左利きはその逆)。あなたが近づいたときに眉を動かさない、笑顔を見せない、頭を傾けない部下とのあいだには、互いに信頼し共感し合える関係がまだ築けていないことがうかがえる。ちなみにその部下は、あなたが目の前にいるときにこうした「敵意シグナル」を発していることを、自分では気づいていない。一方で、あなたと一緒にいてミラーリングをしない部下は、あなたを嫌っている可能性がある。ふたりの関係において、なにか問題があるのではないだろうか? それを確かめるためには、「リード&フォロー」というテクニックを使うとよい。まず、上司であるあなたが先に、部下のしぐさを真似る。数分後、今度はあなたが体の向きを変える。このときに部下があなたと同じように体の向きを変えたのであれば、ふたりのあいだに信頼関係が生まれたことになる。