日本の映画市場は「ガラパゴス状態」なのか。週末興収ランキングで、2週連続1位となったのは『関ヶ原』。同じ週には世界中で大ヒットしている『ワンダーウーマン』が、それより大きな規模で公開されていたが、1位は取れなかった。なぜ日本の観客は「洋画」に冷たいのか。ライターの稲田豊史氏が分析する――。
(C)2017「関ヶ原」製作委員会
『関ヶ原』

■製作国:日本/配給:東宝、アスミック・エース/公開:2017年8月26日
■2017年9月2日~9月3日の観客動員数:第1位(興行通信社調べ)

日本史が苦手な観客への「配慮」

西暦1600年、徳川家康率いる東軍と石田三成を中心とした西軍が現在の岐阜県不破郡で戦った「関ヶ原の戦い」。これを題材とする『関ヶ原』が、2週連続で週末興収ランキングの1位となりました。

出足好調の理由はいくつも考えられます。岡田准一、役所広司、有村架純といったキャストの知名度・人気や、彼らのメディア露出による宣伝が奏功したこと。いつの時代も中高年男性に一定数存在する「時代小説好き」や「大河ドラマ視聴層」を呼び寄せたこと。加えて、ここ数年のトレンドである「武将好き歴女」の存在も、動員の追い風となったかもしれません。

映画を観てみると、日本史があまり得意でない観客への「配慮」に気づきます。登場人物は多く、関ヶ原の決戦に至るまでの各陣営の動きは少々複雑ですが、ナレーションやテロップ(年月日や人物名)をうまく挿入することによって、観客が混乱しないようになっているのです。

ただ、今回論点にしたいのは、『関ヶ原』そのものではなく、女性戦士が主人公のハリウッド映画『ワンダーウーマン』との比較です。同作は『関ヶ原』の1日前、8月25日に日本公開されました。

9月6日現在、『ワンダーウーマン』は全世界興収が8億ドル超、全米興収が4億ドル超(いずれも目下更新中)と、映画史に残るメガヒットを記録しています。「4億ドル超」とは、それまでに公開された“すべての”映画のなかでトップ20に入る成績……と言えば、そのすさまじさが伝わるでしょうか。アメコミを原作としたスーパーヒーロー映画に限れば、全米歴代4位に入る快挙です。

日本で人気があるのは邦画とアニメばかり

ところが、日本での『ワンダーウーマン』の出足は、8月26日~27日の初週末で第3位、9月2日~3日の2週目も第3位と、全米や世界での勢いに比べると寂しいものでした。どちらの週も同時期公開の『関ヶ原』に1位の座を譲っています。なお、両週とも第2位は 、1カ月以上前の7月21日に公開された『怪盗グルーのミニオン大脱走』でした。

しかも『ワンダーウーマン』の初週末の公開規模(596スクリーン)は『関が原』(360スクリーン)の約1.7倍もあります。にもかかわらず、興収は同3億9600万円に対して同2億6700万円と、3分の2程度にとどまってしまいました。

この結果に一部の“良心的な古参映画ファン”たちは、「日本で人気があるのは邦画とアニメばかり。世界にも類を見ないガラパゴス状態だ」と、どちらかと言えばネガティブなため息をつきました。

こうなった理由を端的に言うなら、「ワンダーウーマン? 誰それ?」に尽きるでしょう。