アメリカの自動車産業は苦境にあえいでいます。なぜこんなことになってしまったのでしょうか。ジョセフ・ラウード(マサチューセッツ州)


 

あなたの質問に対する答えは、詳しく説明しようとすれば1冊の本ができるほど長くなりますが、ここでは概要だけをお話しします。

アメリカの自動車産業のサプライチェーンは炭鉱を出発点とし、製鉄所を経て、デトロイトの工場が終着点になっています。これは長い間、よくできた完璧なシステムでした。労使交渉の時期が来るたびに、それぞれの製造段階の労働組合が賃上げを要求し、経営陣は結局その要求を呑んで、賃上げのためのコストは選択の自由のない消費者に転嫁されていたのです。

そこに外国の競争相手が入ってきて、アメリカの消費者は誰でも予想できるような当然の反応をしました。その結果、まず石炭業界が、次いで鉄鋼業界が倒産と再編の嵐に見舞われました。このプロセスは痛みを伴うものではありましたが、これらの産業は今では競争力を取り戻しています。

一方、自動車産業はもがき苦しんでいます。自動車産業の製造工程はより効率的になり、品質も向上しているのですが、大きなコスト劣位が残っているのです。その最たるものは、広く指摘されているように、労働者の退職者年金を賄うために1台につき2000ドルから3000ドルが価格に上乗せされていることです。

このままいくとどうなるでしょうか。

魅力的な新車を次々に出すことは助けにはなるでしょうが、じわじわと忍び寄ってくる死を引き延ばすほどの効果しかありません。私の経験から言うと、産業が衰退局面にあるとき、そのリーダーたちは事態がどこまで悪化する危険性があるかを理解していないことがほとんどです。

あまりにも楽観的な調子のよい売り上げ予測や、自分たちが改善の努力をしている間、競争相手は同じところにとどまっているだろうという思い込みは、本当に必要とされている厳しい措置を先延ばしにする「思考態度の誤り」のほんの一部にすぎません。

今日、自動車産業がこうした衰退の流れを阻止することは可能ですが、そのためには途方もなく大きな勇気が必要でしょう。

たとえば、閉鎖を検討している工場が4つだとすると、実際に閉鎖すべき数はおそらく8つに近いはずだと考えるべきです。廃止を検討している車種が2つだとすると、4車種は廃止を考える必要があります。検討されているのが賃金凍結だとすると、本当に取るべき措置はむしろ30%の賃金カットでしょう。

選挙で選ばれた労働組合のリーダーが、こうした厳しい改革を推し進めるのは、任命された経営者がそうした改革を宣言することよりもはるかに難しいということは言うまでもありません。しかし、これ以外にアメリカの自動車産業を今の苦境から復活させる方法はないのです。

経営陣も労働組合もこの問題を自分で生み出したわけではなく、受け継いだだけです。しかし、両者がともに当事者意識を持って思い切った改革を進めなければ、過去がすでに未来を予告しています。石炭産業や鉄鋼産業と同じ運命が自動車産業を待ち受けているのです。