【部下からの信頼が篤い上司とは】

●仕事に精通し部下の力になる

リーダーシップの「パス・ゴール理論」path-goal theory(*3)では、上司の役割は、明確な手段・方法を示すことによって部下の目標達成を助けることと考えられている。これはリーダーシップの中心的機能に関わるもので、部下の信頼感との間にはきわめて強い相関関係が見られ、この条件で評価が高い上司ほど、部下からの信頼が篤かった。こうした上司とは、具体的には、統率力・指導力にすぐれた上司、判断や指示が的確で部下の仕事を成功に導く上司、能力に応じて仕事を部下に任せる上司、部下が困ったときには力になってやり、社内の圧力から守ることができる上司であった。

●誠実・公正に部下に対応する

職場での上司と部下の関係は、権限に基づく上下の関係であるが、同時に、人間と人間の関係でもある。したがって部下から見て上司が誠実・公正な人間と感じられることと、その上司への信頼感との間には当然ながら高い相関関係があった。心理学者の三隅二不二(じゅうじ)は、リーダーシップの働きをP(パフォーマンス:課題遂行)機能とM(メンテナンス:集団維持)機能の2つに大別したが(*4)、誠実・公正な対応は、このM機能に含まれるものといえよう。部下から見た誠実・公正な上司とは、具体的には、部下の言うことに真剣に耳を傾ける上司、部下との約束や秘密を守り、部下を裏切ることがない上司、部下を公正に評価する上司、などである。この「公正さ」は、こんにちのように正社員、派遣社員、アルバイトなど、身分・立場が異なる部下たちを統括する上司にとってはとりわけ重要であろう。上司は、何事に対しても一貫した態度をとるべきで、相手の身分・立場によって態度や意見が変わるようでは、すべての部下からの信頼や協力を得ることはできないであろう。

●オープンで率直である

上司から評価される立場にある部下は、上司が「なにか腹に一物ある」「思っていることを隠している」と感じるようでは、安心して仕事はできない。自分の考えを率直に表現するオープンな上司に部下からの信頼が集まるのはごく当然である。自分の考えをオープンに言ってくれる上司、聞き心地の良いことだけではなく、悪いこともストレートに言ってくれる上司のもとなら部下も安心して働ける。

アメリカの心理学者J・カラン(Curran)らによると、自己開示度(self-disclosure)が高く、自分の考えや感じていることを率直に伝える度合いが高いリーダーほどメンバーからの好感度が高い傾向があった(*5)。